女兎が啼く | ナノ
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万事屋メンバーの背後に潜むドS






朝八時。万事屋のメンバー、志村新八はクリーニング屋から受け取った着物を抱えながら万事屋へ向かっていた。

今日は確か依頼何もなかったな…どうせ今日もぐーたらしてるだけだよ...はぁ...。

なんて朝から幸せが逃げるような溜息を吐いていれば、" 万事屋銀ちゃん " と大きく書かれている看板が目に入った。一階でスナックを営んでいるお登勢さんに挨拶をして、新八は二階へ繋ぐ階段を上がる。だが朝から早々、彼は衝撃的な光景に固まることになる。


「ぎ、銀さん…何してんですか。通報されても可笑しくないですよ。」

「…なんだ、新八か。いや、寧ろ俺は褒めて欲しいね…。俺お前が居ない間、頑張ったからな…。もう俺スゲーわ…マジ勇者だわ...」

「へえ、そうですか。殆ど意味分かんないですけど、入りますよ」

「なッ…待て!童貞が手を出しちゃいけねー代物だぞ!上玉だぞ!」

「何言ってんですか銀さん。ホント意味分かんないですけど」


新八は呆れるようにそう言うと、軽く扉を開けて家の中に入って行った。慌てて後を追ってきた銀時は、必死の形相で辺りをキョロキョロと見渡す。


「名前は!? あのビッチは何処だ!?」

「名前って誰ですか? 銀さん夢でも見たんじゃないですか?」

「夢…?あぁ確かに…夢か。いや夢だったら惜しいけど…夢か。有り得るな…」

「はいはい。じゃあ銀さん、寝室は使ってないんですか?一応換気しますよ」

「寝室…?...寝室だと!? いや新八もしかしてそこにッ…!」


ガララッ。新八が平然と開けた、銀時の寝室内には何故かきちんと敷かれている布団と、その中で眠っているーー。

その瞬間、新八の瞳孔がぐっと大きく開き、誰よりも一番に叫んだ。


「なっ……ぎゃ、ギャアァァァァァ!!!!!!!!! おおおおいッあ、アンタ何してんだァァ!!??信じられねぇ...見損ないましたよ銀さん!!」

「っるせ…!違ぇッて。お前が昨日帰った後色んなことがあったの。な?だから一回その扉を閉めようぜ」

「いや誰が閉めるかァァァ!!!! アホクソ天パ何があったのか説明しろォォォォ!」

「うるせえって。朝からその声は耳に響くわ。てかお前の為に俺は何にも言わねえ。童貞は繊細だからな」

「なっ何ですか逆に気になるでしょうがァァ!えっ、あ、ぎ、銀さん何がッ」

「も〜うるさいネ。お前等のせいで目が覚めたアル」


目を擦りながら起きて来たのは神楽。無遠慮にも開いている襖を神楽は眠そうな顔で覗いた。
布団の中には当然、ぐっすりと眠っている名前が居た。


「風俗嬢寝てるアルか。それとも銀ちゃんが襲ったんアルか」

「え…ふ、風俗嬢...?お、襲った...?」

「おい神楽。誤解を招く言い方するんじゃねえ。新八、今寝ている女は風俗嬢じゃねぇ、タダの痴女だ。OK?」

「そうアル新八。だから興奮すんなヨ童貞」

「こ、興奮してないわァァァァ!!!!!」


と、まあ新八の五月蝿い怒声に反応して、布団から出て起きたのは名前だった。それに気付いた銀時と新八が鼻血を出したのは無理はない。新八は昨晩の銀時と同じように後ろへ倒れた。


「…フッ、もう慣れたぜお前のその格好。こんなくらいで倒れちゃ大人の男じゃねぇ」

「名前なにアルかその格好。何のプレイアルか」

『ん…?…っ!! ぁ、ごめん…!』


スウェット一枚しか身につけていない状況を思い出し、名前は顔を真っ赤にしながら神楽の後ろに隠れた。顔だけひょっこりと出した状態で、銀時におそるおそる尋ねる。


『ごめん銀ちゃん…!えっと今何時?』

「んー八時半。あれお前屯所行くんだっけ?」

『うーん…いや行かなくても…。いや、寧ろ行っちゃ駄目なんだよ。ほぼ理不尽に捕まったしね』

「えっ名前あの税金泥棒達に何かされたんアルか」

『えッ…いや…されたっていうか...』


名前は目を泳がせながら淡々と説明をする。


「ほら、何ていうかホラ、私の仕事ってちょっとだけ幕府に反するのね。攘夷浪士の人とも一応私関わり持ってたから…ていうか今回は地球の攘夷の方との面談だったしね。で、その極秘資料を!あの沖田総悟ってやつの目の前に落としてしまったんですよ!』

「あーなるほどね。んで?」

『すっごく絡んで来てうざくて、警察に来いだのうるさかったから私その紙を燃やしたわけ。そしたら何かあっちがキレてバズーカ打たれて、目が覚めたら取り調べ室にいて…。…で、えっと。まぁ、それから色々あって、えっと帰してもらえることになって、明日また事情聴取するから来いって』

「え?その色々あってって何?何されたのかな名前ちゃーん?」

『えー?そこ詮索しないでくれるかな銀時さーん?』

「そんな事があったんアルか。しょうがない。この江戸の女王神楽様があのクソサドをこらしめてやるネ、酢昆布永久分で」


フンと女気がなく鼻息を鳴らすと、名前はキラキラした目で神楽を見つめた。



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