角倉さんが投げたクナイを壁から抜いたのち、そこから出た。今はひたすら彼の後ろを走っているのだが、絶えず攻撃されないかを確認しなければならなかった。
「止まれ」
その言葉の少し前―-いや、ほとんど同時だった――に、彼が止まった。私は危うくその場を通り過ぎるところだったわけだが、なんとか踏みとどまった。そこもまた古びたところで、かつては存在していただろうガラスが、あるべき場所になかった。
『…ここに、ほんとにいるの?』
「入ればわかる」
『…あなたが先に入ってください』
「…そうだな」
建物の中は暗く、太陽が照りつける外から入口に入ったため、目が慣れるのにしばらくかかった。漸く慣れたころに、5人の人を見た。
「木の葉に向かう途中だった奴らだ」
『…一般の人を、』
「当り前だ。こっちの方が効率がいい」
『…どうすれば、解放してくれるんですか?』
「簡単さ。俺の言った通りにすればいい」
しかし、次に彼が言った言葉は、あまりに大きなものだった。
『今、何を、』
「九尾。尾が九本ある化け狐のことだ、お前も知っているだろう」
『そんなものを何に使うんですか』
木の葉をつぶすため、と。
「九尾のありかを突き止めろ。期日はいずれまたお前に伝える」
『まだ受けるとは言ってません』
「お前は断れない、…違うか?」
うっすらと笑みを浮かべた彼は、右手に持ったクナイを人質の一人に向けていた。よく見ると、子供もひとり入っている。
『人質を殺したら、九尾の情報は渡せない』
「ああ、そうだな。…だが、お前がこのことを他に漏らせば、こいつらの命は保障できない」
帰り際、その子の視線とぶつかった。助けて、と訴えているようで、そこから一度離れなければならない自分が嫌になった。今すぐ彼らを助けてあげられるほどの強さが私にあればいいのに、と。
長期任務が終わって里に帰ってから、私はあちこちを探し回った。落ち着いていられたのは、ゲンマさんが隣にいたときだけだったように思う。
そして、期限が決まった。中忍試験の本試験の日まで。…あと1か月ほどしかない。
でも、目星はついているのだ、後は証拠だけ。
命がけの諜報部
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