ゲンマさんの隣が落ちつけたからなのだろうか、ある日の任務のことを思い出した。それは5か月と1週間の長期任務で、抜け忍大蛇丸のアジトの一つに侵入するものだった。私のほかにも諜報部が2人、医療忍者が1人、つまり四人一組の任務。
最初はひたすら監視をするだけだったけど、少しずつその内部に入り込んでいったのだ。
ギイィイ
金具がさびてしまった扉の開く音がして、私はさっと身構えた。
「随分と久しぶりだな」
『…』
知らない人だった。いや、その人は確かに知っていたが、今ここにいるなんてありえない。その人――角倉さんは、前にミナトさんが…。
「“なんで?”って顔してるな。教えてやろうか?なぜ俺が生きているのかを」
クナイを取り出そうとポーチに手を滑らせれば、それより先に彼のクナイが飛んできた。それは私の腕をかすめて壁に突き刺さる。俺はここに戦うために来たわけじゃない、と言って、窓枠に彼は腰かけた。
「確かにあの時俺は死にかけたんだけどな、ある人と出会って救われた。今はそいつの下で働いているが、」
『いずれ、木の葉をつぶしに来る』
「そうだ。よく覚えていたな」
『私に何の用ですか?…あなたのもとに戻るつもりはありません』
戦う意志がないのなら何故私の前に現れたのか、どうすれば彼を捉えられるか、どうやってほかの人に彼がいることを伝えるか、私の頭はいつになく働いていた。途中で故障して急ブレーキがかからなければいいのだが。
「交渉だよ、お前にな」
『…交渉?』
「俺の条件を飲めば、人質を解放しよう」
『人質!?』
「声を荒げるな。人質と言っているだろ、まだちゃんと生きている」
『どういうことですか?』
私の問いに返事しないまま、彼は窓から立ち上がった。階下から誰かがやってくる、神経を研ぎ澄ましていたおかげで(もちろん角倉さんが目の前にいるから)、私にもそれは容易に分かった。
「来い、人質を見せてやる」
『そんな罠に私がはまるとでも?』
「罠だと思うなら来なくてもいい。…人質は殺す」
『…、』
もし罠であるなら、彼――角倉さんについて行けば、私が殺されるか、最悪は私が人質になって里に迷惑がかかる。でももし、彼の言うことが本当なら、私が人質を助けないと、彼は本当に人質を殺してしまうだろう。
『わかりました、』
罠であったなら、その時は――。覚悟を決めなきゃ、それが忍の宿命なのだ。
過去はずっと過去のまま
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