信頼の隣に | ナノ
光は見えるのに、なかなか届かない。それでも何度も何度も手を伸ばした。ただ、どうしてそれに手を触れたかったのかはわからない。
そして、触れる前に視界が明るくなった。


『…』


目を開けると、知らない人がじっとこっちを見下ろしていた。白髪のおじさんで、ミナトさんやクシナさんではなかった。ああ、これは夢なんだ、と思って、目があったことは気にも留めずに再び目を閉じる。今度こそ、と再び開眼。


『…あれ?』


おかしい。またあのおじさんだ。もう一度目を閉じて、開いて、と何回か繰り返したところで、そのおじさんが口を開いた。


「何をしとるんじゃ、お前」
『…夢が覚めてくれなくて、』


困ってるんです、と言えば、盛大に笑うその人。


「自来也先生、そんなに笑ってると起こしちゃいますよ」
「ん?いやあ、な。この娘が面白いことを言うもんでのお」


近づいてきたのはミナトさんだった。黄色い髪をした彼は、とても優しそうに笑っていた。遠くでトントントンと聞こえるのは、きっとクシナさが何か作っているのだろう。私はどれくらい眠っていたのだろうか。


『おはようございます』
「もう“こんばんは”の時間だよ」


そう言って彼は枕元にあった椅子に腰を下ろした。


「気分はどう?悪い夢はみなかった?」


はい、と言う代わりに首を縦に振る。こんな人が――こんな優しさだけでできたような人が本当に黄色い閃光と呼ばれる人なのだろうか。「黄色い閃光をみたらとにかく逃げろ」って、誰かが言ってたっけ。


「それならよかった。お腹はすいてる?…まだ大したものは食べれそうにないけど、クシナにお粥でも作ってもらおうか?」
『いえ、お腹はすいてないので』
「…そうだ、君の名前、まだ聞いてなかった。教えてもらってもいいかな?」


相変わらず笑ったままの彼に、私は躊躇うことなく名を明かした。他里の忍びで、しかもあの黄色い閃光なのに、この人は信頼できそうだなって思えるのはなんでかな。


『うずまきハルです』


しばらく隣で黙っていたおじさん――ミナトさん曰く自来也先生――が驚いたように目を見開き、しかしすぐに元の顔にもどった。ミナトさんの表情は、あまり読めなかった。





故郷に花を



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