両手に満開


『んー…あれ?佐吉くんは一緒じゃないんですか?』

「佐吉ならば弥三郎や竹千代と共に、外へ遊びに行ったわ」

『へぇ…弥三郎くんとは仲良かったけど、最近は竹千代くんとも遊ぶようになったんですね』

「嗚呼、われを置いて出掛けるようになった」

『…あ、寂しいんだ』

「…………」









「ほら、こうやって編めば腕輪になるよ」

「すごい!やさぶろうは器用なんだなっ」

「そんなもの作っても花は枯れる」

「ひ、酷いこと言わないでよ佐吉…これ、佐吉にあげるからさっ」

「…………」



公園で摘んだ花を編み込み、可愛い腕輪を作った弥三郎。それを佐吉の手首に通せば、じっと眺めて首を傾げる

やはり必要性が解らない。感受性が乏しいです佐吉くん



「ワシもほしい!」

「じゃあ竹千代にも作るね。お姉ちゃんにもお花、摘んであげようかな…」

「…ナキに?」

「うん!お姉ちゃんって意外とお花とか好きそうだし。部屋に飾ると綺麗だと思うんだ」

「…………」

「ワシもつむっ!!」

「じゃあ、竹千代はその黄色い花をお願い」




キャッキャと笑いながら花を摘み始めた二人。その側で、佐吉はじっと自分の腕を見つめていた

弥三郎がくれた、花の腕輪



「…………」

「さきち?どうした?」

「私はコレを作る」

「ん?」

「ナキに、この花の輪を作る」



そう言って腕輪を外したかと思えば、同じ花を探しに歩き出す

それを見た竹千代も急いで佐吉を追った



「ワシも!ナキにわっか作る!」

「マネをするな竹千代。そしてついて来るな」

「ワシもっ!!」

「うるさい!」





「竹千代、あんまりたくさん摘むと可哀想だからそろそろ…あれ?竹千代?佐吉?」








「…さきち、そっちじゃなくて反対にくぐらせるんじゃないか?」

「うるさい、間違いなくこっちに…あ」

「ほら、ほどけたぞ」

「・・・・・」



バラバラに散らばった花たち。何度編んでも弥三郎のように、綺麗な腕輪にはならなかった

その向かい側に座った竹千代も、グチャグチャな輪を膝に乗せている



「うーん…やさぶろうは、どうやって作ったのかな」

「だから手本をそこに置いている」

「でも上手くいかないぞ」

「…………」

「…………」

「…………」

「…さきち、」

「何だ」

「どうして花のわっか、作ろうと思ったんだ?」



落ちた花を掻き集め、再び作業を再開する佐吉。その佐吉に問う竹千代

佐吉は顔を上げることはなかったが、ぽつり、と小さく答えた




「…ナキは花が好きだと、弥三郎が言っただろう」

「あ…うん、言った。でも花をつんでかざればいいだろ?」

「…………」

「………?」

「…ナキに、似合うと思った」



自分の腕に花があっても何とも思わない

でもナキの腕にあったなら…似合うと思った。ただそれだけだ、と呟く佐吉

言ってしまうと恥ずかしくなったのか、ふいっとそっぽを向いてしまう



「…………」

「…貴様は、どうして私のまねをする?」

「ん?うーん…」

「…………」

「…うん!ワシもナキに、花のわっかが似合うと思った!」

「…同じではないか」

「ははっ!あ、じゃあ、いっしょに作ろう!二人で半分ずつならできるかもしれないっ」

「…じゃまはするな」

「うんっ!!」








『こら!迷子少年、こんな所で何してんのっ』

「ナキっ!!」

「あ…」



広い公園の奥の奥。そこで佐吉くんと竹千代くんが並んで座っていた

急いで駆け寄り軽く拳骨!私だって叱るときは叱るんだ



『弥三郎くんが泣きながら帰ってきたんだよ!俺のせいで竹千代がいなくなっちゃった、て』

「ごめんなさい…」

『佐吉くんまで居ないから、刑部さんも家を飛び出しそうになって…!』

「………すまん」

『みんな心配してるよ、佐助くんと片倉くんも探してくれてるし…はぁ、無事なら良かったけど』



半泣きになった二人。もう怒ってないよ、と彼らの背中を撫でてやる

きっと帰ってから片倉くんの長い説教が待ってるからね



『まったく…こんな所で何してたの?遊具も何もないのに』

「あ…ナキ!しゃがめっ」

「ナキ!しゃがんでっ」

『ん?はいはい、』



何だ何だ、どうしたの。二人に服を引っ張られ、しゃがむように促される

言われるがまま彼らの前に膝をつくと、よいしょ…私の頭に何かが乗せられた



『え…』

「やっぱり!ナキに似合うな、さきちっ」

「…ああ」

『似合う?えっと、何を乗せたのかな?』

「花のわっか!」

「…………」



自分の頭に手を伸ばしたら、指先が何かに触れて傾いた

それを慌てて直す。これは…花の、冠?



「本当は腕輪にするはずだったんだが…」

「二人で作ったから、大きくなりすぎたんだ」

『…………』

「…いや、だった?」

「か、形はいびつだが、丈夫だ!」

「さきち、これは丈夫さをもくてきにはしてないぞっ」

「うるさい!」

『…私に、作ってくれてたの?』

「「ナキに似合うと思った!」」

『〜〜っ!!!』

「うわっ!!!?」
「ぎゃっ!!!?」



目の前の二人を同時にギュッと抱き締める

なんて可愛いことを、二人が夢中になっていたのは花冠作りで…それは私のためだった




『くそっ…片倉くんには私も一緒に怒られてあげる!ありがとう!』

「だ、ダメだぞナキ!」

「ナキは叱られちゃダメだ!」

『こんなプレゼントもらえて、黙ってられるかチクショー!』



可愛い佐吉くんと竹千代くんを両腕で抱く…ああ、もう、両手に花だよ!

そう言ったら佐吉くんは、きょとんとした顔で首を傾げる



「花輪は1つだから、両手にはないぞ?」

『うん、その花じゃないんだけどな、とぼけ気味な佐吉くんも可愛いよ!』

「ナキもかわいいから、ワシも手に花だな!」

『ちゃっかり両手に花の意味が解ってるのが怖いけど、可愛いからよし!』




二人まとめて可愛いぞ!そう言ったら佐吉くんはそっぽを向き、竹千代くんは嬉しそうに笑った


真っ白なその花冠、私に似合っているだろうか






20130428.
キリ番555555あっさりーん様

佐吉と竹千代でほのぼの甘!Σでは仲の良い関ヶ原です^^







※花冠は白詰草のつもりで書いてましたが…花言葉が「復讐」だったので急いで添削←
ほのぼのです、ほのぼのなんです!


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