成長期の恐ろしさを


「ナキちゃんって背の高い人が好みだよね!」

『おっと、いきなり肯定から入るかマセガキ。そりゃ私より高い方がいいに決まってんじゃん』

「貴様…嫌味か」

「いててっ!!?違う、違うから蹴らないでよ松寿丸!」



私より背の高い宗兵衛くんが、私より背の低い松寿くんに蹴られている

まぁ、デカイ君が言うと嫌味だよね仕方ない



『弥三郎くんも高いよねー、大きくなったら背の高い美人さんになってね』

「び、美人かは分からないけど、背は高くなりたいな」

「それがしも!」

「ワシも!」

『君らはそのまま成長しないで欲しいな…佐吉くんも美人さん派だよね、きっと』

「興味ない」

「ぬしは健康に育てばよい、見てくれなど二の次よ」



そう言いつつ、刑部さんは佐吉くんが美人に育つ自信があるんだろう親バカめ

子供たちがワイワイ騒ぐ中、何故か梵だけは自慢気に胸を張っていた




「大きくなるの待たなくても、こじゅうろうはナキより背が高いぞ!」

『まぁ、そりゃね。成長期は過ぎてるし』

「だからやっぱりお似合い…むぐっ!!!?」

「た、頼みますから黙ってください…!」

「……………」

『どうしたの佐助くん』

「別にー、俺は今が成長期だからもっと大きくなるし!」

「ぬしではたかが知れよう」

「〜〜っ!!!?」

『あはー、みんな楽しみだね』



ほらほら、早く寝なさい。寝る子は育つんだよ







『こら刑部さん!また夜更かししたんですかっ』

「一日ぐらいよかろう。ぬしの寄越した書が面白いのが悪い」

『責任転嫁っ!!!』



朝っぱらから騒ぐ私たち。こっそり書斎に隠って本を読んでた刑部さんを引っ張り出す

もちろん遠慮はしてる。広い心に感謝してください



「佐吉は寝かしてから来た、ならばよかろう」

『む…そりゃ佐吉くんまで一緒なら朝食抜きでしたよ』

「ヒヒヒッ!肝に銘じるとしよう…おっと、」

『あ、刑部さ―…!』

「刑部っ!!!」



バランスを崩した刑部さんが転びそうになったから、私は慌てて手を伸ばした!

そして、その反対側からも。誰かの綺麗な手が伸びて彼の腕を掴む…うん、細くて綺麗な手



『………ん?』
「………は?」

「気をつけろ刑部!貴様が目の前で転ぶなど、私の心臓に悪いではないかっ」

「あ…いや、すまぬ、…」

「ナキも目をそらすな!ちゃんと見ておけ」

『ご、ごめん』



えーと、うーん、あの…テンパる私の隣で刑部さんも固まっていた

私たちに説教する美人さん。面長な彼は綺麗な銀髪で、前髪は一度見たら忘れないぐらい尖っていた。クチバシですか



『…刑部さん』

「…ナキ」

『心当たりは一つだけなんですが、どうですか?』

「奇遇よなぁ、われも一つだけよ。同時に言うか」

『あ、はい。じゃあいきますね、せーのっ』





佐吉(くん)?


そう一緒に問いかければ、彼は青筋を浮かべて怒鳴った




「いつの名で呼んでいる!今は三成だっ!!」

『三成っ!!?』

「これはどういうこ―…」

「ナキっ!!!?」

『うぉっ!!?』



今度は背後から低くて掠れた知らない男の声が聞こえた!

刑部さんに隠れつつ振り向けば、佐吉く…三成くんと同じ銀髪の、体格のいい兄ちゃんが私を見てる。いやいや貴方は知らない



「ここは懐かしいな!また来たのかっ」

『ちょ、だれ誰ダレっ!!?貴方みたいなガチムチ知らないんだけどっ!!?』

「は?何言ってんだ!俺だ俺、弥三郎!今は元親だっ」

『オレオレ詐欺ぃぃぃぃっ!!!』

「喧しいわっ!!!」

「ぐあっ!!!?」

『うわっ』



自称・弥三郎くんな元親と名乗る男。その彼が思いきりぶっ飛んだ

そして、さっきまで男が立っていた場所には別の人。この美人さんは…!



『松寿くんっ!!!』

「…………」

「い、て…って、なんで毛利は一発で解ったんだよっ!!?」

『だって松寿くん、そのまま一回り…いや半回り大きくなっただけだから』

「・・・・」

「しょ、松寿、怒るでないわ。仕方なかろう」

「貴様がその名で呼ぶな大谷……大谷?」

「?」



刑部さんを見て驚いた顔をする松寿…じゃなく元就くん?

こちらを向いた元親くんも首を思いきり傾げていた。傾げたいのはこっちだよ



「そういや…なんで大谷は若いんだ?昔に戻っちまったみてぇだ」

「…ぬしはまことに弥三郎か?そして松寿…佐吉か?」

「当然だ!」

「貴様だけ年をくっておらぬと申すか。ここはナキの世、ならば他も…」

「ナキどのぉぉおぉぉっ!!!」

『ぎゃあっ!!?』



再び聞こえた叫び声!今度は声だけでなく赤い塊が転がり込んできたゴロゴロと

そしてバッと起き上がった彼は眩しい笑顔を私に向けてくれる



「ナキ殿っ!!!」

『べ…弁丸、くん?』

「やはりナキ殿も居ったか!佐助っ!!ナキ殿は無事だっ!!!」

「ちょっと旦那!俺より先にいきなり飛び出さな―…っ…!」

『あ…』

「ナキ、さん?」



弁丸くんを追い掛けやって来た迷彩服な男の人。彼は佐助、と名を呼ばれた

私の知る佐助は一人だけ



『佐助くん…?』

「居た、んだ…アンタも…!」

「猿と弁丸、残りは四名か。奴らは同じ部屋に居ったなぁ」

『ええ、現在進行形で階段を駆け降りる音がします』

「あーっ!!!やっぱり居たナキっ!!!よかった、目が覚めた瞬間ここだから驚い―…ぐはっ!!?」



階段から大男が飛び出した瞬間にその足を引っ掻けた

転んだ彼、すかさずその頭に足を乗せる。うめき声とか気にしない



『ちゃっかり呼び捨てになってるんじゃないよマセガキ』

「痛い痛い痛い!ああ、俺だけ扱いが酷い…本物のナキだ!」

『君も見た目はそんなに変わってないな、デカかったしね。中身まで一緒か!』

「ナキっ!!」

「うごっ!!?」

『ん?』



次にバタバタと駆け寄って来た彼が、足元の宗兵衛くんに気づかず踏みつける

髪を立てたゴワゴワ頭。嬉しそうに笑う笑顔は太陽みたいなあの子の面影バッチリだ



『竹千代くん!』

「久しいなナキ!元気そうで何よりだ」

『君も元気…というか逞しく育っちゃって。私は悲しいぞ!』

「ハハッ、ナキは会うたびにそれを言っているな!仕方ないだろう、ワシだって人の子だから成長する」

『ん…?』

「家康もナキも、いつまで人を踏んでんだよっ!!?」

「え…うわぁっ!!慶次っ!?すまないっ!!」



家康くんの言葉に引っかかりつつ、慶次くんから足を退けてやる

さて、だいたい揃ってしまったわけだが…あと二人。次はあの主従の番だ




「Ah?なんだ、他の奴等も揃ってんじゃねぇか」

『………は?』

「懐かしい面子ばかりだが…ナキも一緒か、そりゃよかった。なぁ?小十郎」

「ハッ」

『…………』

「…ナキ?」

『なんたる…悲劇…!』



オールバックな怖い顔…無駄に年期の入った片倉くん。そんな彼を傍らに置いて登場した眼帯男

私の可愛い梵まで…ガッシリ成長してしまっていた






20130422.
続く→
起きたら成長していました(刑部を除く)


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