父の背を見て育てよ少年!


『堅物男子ー、組み立ての棚買いにいくからさ、荷物持ちお願いできる?』

「ああ、かまわね…、…ぐっ…!」

『え、なになにどうしたの』

「堅物男子と呼ばれ素直に返事をした…自分が情けねぇっ」

『あはー、慣れって怖いね』

「誰のせいだっ!!?」

「ナキーっ!!」

『お?』



ボフッと飛び付いてきた塊をそのまま受け止める。来たな可愛い息子よ

振り向けばいつものニパッとした笑みを浮かべた竹千代くんがいた



『今日も今日とて元気だね竹千代くん』

「ワシはいつでも元気だ!だから荷物もちやりたい!」

『あ、手伝ってくれるの?』

「駄目だ竹千代、テメェは来るな。重いもの持つんだ、危ねぇだろ」

「えぇーっ!!?ワシ力持ちだぞ、だから行く!」

「ダメだ」



ヤダヤダと退かない竹千代くん。そうそう、君はそうやって我慢せず我を通しなさい



『イジワルしないの堅物男子、軽いもの持たせてあげればいいでしょ』

「だが、走り回って迷子になるのがオチだ」

『手を繋げばいいもん、ねー?』

「ねーっ」

「しかし…」

「ヒヒッ、片倉はぬしと二人で出掛けたいのよ、なぁ」

「っ!!!?」

『あ、刑部さん』



居間からひょっこり顔を覗かせた刑部さん。隣には当然、佐吉くんがベッタリである

佐吉も行こう!と駆け寄った竹千代くんを足払いして転ばした、こらこら喧嘩しない



「私はぎょうぶと留守番する」

「竹千代、ぬしも残り片倉とナキを二人きりにしてやれ」

「お、俺はそんなつもりで言ったんじゃねぇっ!!」

「はて…童の純真な心を踏みにじってまで、ぬしはナキと二人になりたいのであろう?」

「違うっ!!!」

「ヒヒヒッ!!はてさて他に理由は見つからぬが…なぁ佐吉?」

「なぁぎょうぶっ」

「〜〜っ!!!行くぞ竹千代っ!!」

「ふぎゃあっ!!?」

『おー…』



竹千代くんを担いでさっさと出ていった片倉くん

私も早く行かなきゃ怒られるかな



『じゃあ行ってきますね。何かお土産買ってきます』

「ヒッ…嗚呼、行け行け」

「留守は私とぎょうぶにまかせろ!」

『はーいっ』

「ナキ!さっさとしろっ」

『はいはい』










『竹千代くーん、走って他の人にぶつかっちゃダメだよ』

「わかってる!」

「解ってねぇっ!!!」

「ぎゃあっ!!?」

『おー…』



店の中を走っていた竹千代くんがお客さんにぶつかる…前に、片倉くんが首根っこを掴んで持ち上げた

すみませんすみませんと頭を下げる堅物男子、なかなかレアである



「ナキ!だから竹千代を連れてくるのは嫌だったんだ!」

『梵も弁丸くんも走り回るじゃない、一緒一緒』

「梵天丸様はここまで酷くねぇ!」

『それは君が怖いからだよ堅物男子』



片腕には大きな箱、もう片腕には竹千代くんを抱えている

保護者が板についてきたな…言えばまた怒るだろうか



「ワシ、一人で歩けるぞ!」

「ダメだ!また何処行くか分かんねぇだろ、大人しくしとけ」

「あーるーくーっ」

『ほら、手を繋げば大丈夫だよ。行こう竹千代くん』



解放された竹千代くんと手を繋ぎ、さぁ帰ろうかと歩き出した

店を出て道を歩き鼻歌まじりな彼。片倉くんはなんだか不服そうな顔してついてくる


通行人がチラチラと、私たちを見ていた



『あはー、みんな見てるよ可愛い我が子を』

「?」

『ん?竹千代くんが可愛いってことだよ。ね、堅物男子?』

「…可愛くねぇ」

『君は子供嫌いになっちゃったか。もしくはカッコイイ片倉くんを見てるのかもね』

「な、―……!?」

『ねー、竹千代くん』

「ねーっ」



顔を見合わせて笑う私たちと、照れてゴニョゴニョ何か言ってる堅物男子

青いねぇ、まだまだ



『あ…ちょっと休憩しようか。竹千代くん、アイス食べる?』

「食べる!」

『よしよし、片倉くん。竹千代くんと荷物を見ててね』

「あ、ああ…」

「こじゅうろう、遊ぼう!」

「大人しく待っとけ!」

『あはは、』



二人を残して近くのアイス屋さんへ向かう。竹千代くんは果物系にしようかな〜、片倉くんは納豆アイス一択!

自分の分を何にしようか考えていたら、隣を過ぎる奥様方の声に思わず立ち止まる



「あ…今時珍しいお父さんねぇ」

「ほんと、男の子楽しそう」

『え……』



うちの旦那はねー、と言って去っていく奥様を見送り視線を来た方へ向ける

ああ…なるほど、素敵なパパが居た





「すっごく高いぞ!」

「こら竹千代!髪は掴むんじゃねぇ、だが落ちるなよっ」

「うん!あ、ナキーっ!!」

「うおっ!!?だ、だから暴れんじゃねぇよっ!!」

『………あは』



道路の向こうから手を振る竹千代くんは、私よりずっと高い位置で笑っていた

そして竹千代くんより低い所に片倉くんの頭。こっちを見て苦笑いな彼は…




『肩車してもらえてよかったねーっ!!!』

「うんっ!!こじゅうろう、あっち走って!」

「荷物見てんだから無理だ!」

「じゃあ、うちに帰ったら走って!」

「チッ……髪は掴むなよ」

『………ぶはっ』



なんだかんだ、面倒見がいいじゃないか堅物男子

二人に手を振り返し、さっさとアイスを買って戻ろうか。仲良し親子な彼らの姿がちょっとうらやましいから






「ナキ、早くもどって来ないかな…」

「そうだな…竹千代、」

「ん?」

「ナキを手伝うためについて来た、その心構えはいいぞ」

「うん!こじゅうろうも、いい心がまえだ!」

「…ふんっ、偉そうに言うんじゃねぇよ」







「…あ、ナキさんがいますね」

「ん?ああ、確かに…って、あんな遠くのナキがよく解りましたね部長っ!!」

「ふふふ、彼女のためなら私は千里眼でも開眼しますよ。では挨拶に行き、ま…しょ…」

「…と、隣の男は、確か…!」

「…………」

「子供を肩車しているような気が…」

「・・・・・」

「ぶ、部長…?部長っ!!気をしっかり持ってくれ!」







20130411.
たぶん19でも貫禄で子持ちに見える堅物男子


←prevbacknext→
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -