堅物男子Kの憂鬱


「ナキ〜っ!!!」

『んー?どうした竹千…ぶはっ!!』

「なんて顔してんだテメェっ!!!」



ナキと今度の買い出しについて話していると、部屋に竹千代が飛び込んできた

また誰かと喧嘩か…そう思って顔を上げると、真っ黒に塗りたくられた竹千代が視界に入る!



「な、何だっ!!?墨かそれはっ!!」

「しょうじゅまるがぁぁぁっ」

『ぶふっ、…うっわ、油性マジックじゃん、これ、落ちな…ぶはっ』

「笑ってねぇで何とかしろっ!!だいたい、何でこんな…!」

「我ののぉとに落書きした竹千代が悪い」

『あ、松寿くん』



次に松寿丸が部屋にやってきたが、その手にはグシャグシャになった書があった

竹千代の顔を塗った筆と同じか…だが、やり過ぎだろ



『ノートが…新しいのあげるから許してあげて?』

「ワシもほしい!」

「貴様は反省せぬか…!」

「ぎゃあっ!!?」

「おいおい!蹴ってやるな、さすがに仕返しの度がすぎるぞ」

「そうだ、あやまれ!」

「竹千代…その顔の働きにより、ナキを笑わせることができたのではないか?」

「あ、そうか!ありがとうしょうじゅまるっ」

「言いくるめられてんじゃねぇっ!!」

『あはー、松寿くんは口が上手いね。さすがだよ』

「お前も褒めるなっ!!!」



その後、竹千代を風呂場に抱えて行ったが…数刻洗っても汚れはとれなかった







「ったく今日は散々だった…いや、今日も、か」



こちらに来てからしばらくたつが…俺のため息の量は格段に増えた気がする

ガキを相手にしているのもある。だが最大の原因は家主のあの女だろう



「ガキに甘いと言うか悪ノリに付き合うと言うか…」



悪ガキが無駄に知恵をつけてしまった、そんな表現が似合う気がする

…俺が言うのもなんだが、親の顔が見てみたい




「梵天丸様がナキの影響を受けないようにしなければ…ん?」

『…………』

「おい、何して…ナキ?」

『………ぐぅ』

「…寝てんのか」




机に伏せているアイツを見つけた

何事かと近寄るが、小さく聞こえたイビキに呆れてしまう。つか女が堂々とイビキかくなよ



「まったく…もう少ししおらしくできねぇか?」

『…………』

「ガキ共が女が苦手になったらどうすんだよ…ん?」



ふとナキの手元を見れば、昼間に松寿丸が竹千代に使った筆があった

まじっく、だったか?何かを書いていたようだ



「何書いて……あ…」




机の上に並んでいたのは、のぉとと呼んでいた書だった

色とりどりのそれに、松寿丸、竹千代、弁丸、佐助…全員の名前が書いてある



「他の筆やら湯飲みやらにも…まさか全部に書くつもりか?」

『…………ん?』

「お?」

『……なんだ、堅物男子か』

「なんだ、とはなんだ!」



俺の声で目が覚めたのか、大きな欠伸と共に起き上がるナキ

だから、せめて口元に手を当てて欠伸しろよ



『あー…途中で寝てた』

「…これ、全員の分か?」

『ん、まぁね。本当は譲り合いとか共用するとか教えた方がいいけどさ、私じゃ無理だと思うんだよね』

「…………」

『だからせめて自分の物を管理することぐらいは、みんなにさせないと』



ほら見て自信作〜、と俺に見せてきた書には“かたくらこじゅうろう”とある

名の隣には…何だ、これ




『片倉くんの似顔絵』

「…似顔絵、…?」

『なんだその驚愕した顔はっ!?そっくりでしょ?』

「絵心無さすぎだろテメェッ!!まさか、全員分っ…!」

『オフコース!』



ズラッと並んだそれには、確かに似顔絵らしきものがあった

佐吉のはもう前髪で顔が見えねぇし、弁丸のは泣き出すんじゃねぇか、アイツ?



「明日、弥三郎に描き直させるか」

『酷っ!!寝る間も惜しんで描いた力作だぞ!』

「ヨダレ垂らして寝てた奴が言うんじゃねぇよ」

『うそ、出てたっ!!?』

「……ハハッ、嘘だ」

『…………は?』



俺の返事に一瞬固まったナキだが、みるみるうちにしかめっ面になっていく

…怒らせたか?



『騙したな堅物男子っ!!』

「日頃の仕返しだ!」

『だからって頭きた!いくら私だって、そんな恥ずかしいの見られたら…お嫁に行けない…』

「っ……い、いや、そりゃ…」

『行く気もないけどねっ!!』

「そうだと思ったがなっ!!」



不毛すぎるやり取りは互いに体力を消費するだけだった

何故、こんなことで疲れるんだ…諦めた俺はナキの前に座り、並んだのぉとをまとめていく




「…自分の物を、自分で管理させるのはいいことだと思う」

『んー?…まぁ、親代わり引き受けたからにはこれくらいしなきゃだよね』

「成長を見られなくてもか?」

『さぁ、どうだろ…成長って思いの外すぐ表れるものじゃない?』



少なくとも、そう呟いてナキはうっすら微笑んだ



『さっき片倉くんが冗談言ったのは、嬉しかったかなぁ』

「っ!!!?」

『あはー、堅物男子の成長じゃない?それって』

「っ、じょ、冗談くらい、俺だって言える…!」

『そう?そりゃよかった』

「…………」



今度は茶碗に名前を書き始めたナキ。その隙にこっそりと、束ねたのぉとの一番上を眺める

…やはり、俺には似ていない似顔絵。本人が本気なら余計に質が悪い


だが…



「…これを使いきるまでは、このままにしとくか」

『ん?何て?』

「何でもねぇよ」




手作り、はやっぱりいいもんだ









「…………?」

『佐吉くん、それ反対。こっちが頭でこっちが顎ね』

「そ、それがしじゃないでござるぅぅぅっ!!!」

「うわぁっ!!ちょ、弁丸さまが似顔絵見て泣きだしたんだけどっ!!?」

『・・・・・』

「…弥三郎、やっぱりお前が描き直せ」

「う、うん」







20130323.
キリ番450000鷹瀬様
小十郎とほのぼの

…ほのぼの?え、あれ、ほのぼの?
すみません、Σじゃこれが限界でした…!


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