春の大運動会を


『あ、次は棒運びか。これはね、大きな棒を二人で担いで走るんだよ』

「ふぅん…俺、連係とか苦手だし。次の障害物走ってやつ出るからいいや」

『君が連係苦手なら、うちの子大抵チームプレー無理だよ思春期忍者。これは中学生以上対象だしなぁ』

「よし!じゃあ俺らで出ようよ松寿丸っ」

「我は行かぬ」

「居るだけでいいからさ、ほら、行こう!」

「なっ、放せ宗兵衛っ!!我は出ぬと申したはずぞっ!!」

『おー…』



渋る松寿くんを無理矢理引っ張り、本部テントに向かう宗兵衛くん…あ、蹴られた

こんな時に彼の強引さは役立つよね



『けど、居るだけでいいとか言ったよね…二人で協力する競技なのに』

「俺、どうなっても知らないよ?」

『うん、私も知らない。あ…始まるよっ』




よーい……どんっ!!



ざわざわっ



「ぶはっ!!?」

『あはー、やだあれ何のトンチ?』

「ちょ、競技の決まりとか無視じゃないのあれっ!?いいのあれっ!?」

『みんな拍手してるからいいんじゃない?ほら、社長もカメラめちゃくちゃ回してる』

「・・・・・」




何の騒ぎかと言えばアレだ。棒の端を持って走る他の人たち

それを後目に宗兵衛くんは一人、棒を担いでいた…その端っこに松寿くんを座らせて。うん、確かに二人一組だよね



「宗兵衛、我を振り落とせばどうなるか解っておるな?」

「あはは、逆に振り落とされないでくれよ!松寿丸って軽いから」

「・・・・」

「いでっ!!?ちょ、小さいとは言ってないじゃないかっ!!軽いって言っただけ…て、あ!ナキちゃーん!」





『あはー、頑張ってねマセガキ』

「手を振り返さないでよ恥ずかしいだろっ!!?た、他人のふりだよ他人のふりっ」

『力持ちだね宗兵衛くん。松寿くんもバランスいいねー』

「こんな注目のされ方とかやだ…」



何故か端から見てる佐助くんが顔を隠して恥ずかしがってる。今さらだよ、思春期忍者

見事トップで次に繋いだから、マセガキを褒めてやろうかと思ったけど…



「松寿、もっと食べた方がいいよ。きっとナキちゃんより軽いからさ」

「・・・・・」

『・・・・・』

「ぎゃあっ!!?」

「…自業自得だよ、宗兵衛」







『いてて、父兄のリレーとか出るんじゃなかった…明日は筋肉痛ですよ』

「ヒヒッ、情けないことよ。もう年か」

『走ってない刑部さんに言われたくないです』

「頑張ってねナキ、午後からの競技もあるんだから」

『はぁい…』



濃姫さんにそう言われちゃ頑張るしかないわけで。二、三日後に筋肉痛が来ないだけマシだと思う

浅井先輩も片倉くんもまだまだ元気…すごいな二人とも



『とりあえずお昼にしましょうか、お弁当出しましょ』

「ナキ…まさか作って来たのか…!」

『ちょ、お弁当にカメラを向けないでください織田社長!それにこれは私じゃなく、佐助くんの力作です』

「生意気少年かっ!!?」

「誰が生意気だよっ!!」

「ぐっ!!?」



浅井先輩に佐助くんの一撃が加わる。相変わらず仲が悪いなお二人さん

しかしシートに並んだお弁当は事実、佐助くんの手作りである。朝早くから頑張ってました



「すごいわ佐助くん…見た目も味も文句なしよ!」

「さすけは、すごくりっぱでござるよ!」

「ちょ、弁丸さま…!」

「ナキの食生活は気になっていたが、これならば…気にやむ必要もなかろう」

「ええ、上様」

「べ、別にあんたらに褒められても嬉しくないし、その、ナキさんは…どうかな、口に合…」






『うっわ!弥三郎くんすごいね、リンゴの兎さんっ!!』

「やさぶろう、いつもワシらに作ってくれるんだ!」

「お姉ちゃんが居ないおやつの時に練習してるんだよ、えへへ」

『可愛いし綺麗だし…あ、もしかしてコレって佐吉くん?キャラ弁すごい』

「…私はこんなにとがっていない」

『いやいやそっくりだよ。うわ、隣のおにぎりは堅物男子だ』

「こじゅうろうが怒った顔、そっくりだぞ!」

「ぐっ…た、確かに我ながら…似ていると思う、不覚だ…!」

『器用だね弥三郎くん、すごーい』

「あ、ありがとうっ」




「・・・・・」

「さ、さすけ、おこっちゃダメでござるよっ」

「ナキめ…罪な女よ」

「あんな女々しい男に負けるんじゃないぞ、生意気少年!私は貴様を応援してやろう」

「あら、ナキはああ見えて可愛い物が好きだし…頑張らなきゃ難しいわよ」

「濃…貴様もなかなか辛辣な女ぞ」

「・・・・・」









「次の競技は親子参加ですので、お父さんも出てくださいね」

「・・・・・」

『あはー、だってさ堅物男子』

「…いや、もう、何も言うまい」



役員のお姉さんが綺麗な笑顔で片倉くんに告げ、さっさと戻って行ってしまった

親子で二人三脚。もちろん誘われたからには出場してもらおう



『梵、片倉くんと行ってきなよ』

「えぇー…」

「…………」

「ひぃっ!!?」

「…まぁ遊びとはいえ、この俺が梵天丸様の父と名乗るわけには参りません。分はわきまえております故」

『やっぱり君は堅物男子だな』



片倉くんとの二人三脚も梵は乗り気じゃないようだし…そうなると残りはあの子しかいないだろう






「行くぞ竹千代!出るからには俺たちが一等だ!」

「もちろんだぞ、こじゅうろう!」

『頑張ってねー』



やっぱり片倉くんと竹千代くんの組み合わせで落ち着いたらしい。手のかかる子ほど可愛いし、何だかんだ息の合うコンビ

彼らなら一等賞も間違いな…おや?



「貴様に勝ちは譲らんぞ堅物男!」

「テメェは、浅井…!」

「明智部長から貴様にだけは負けるなと言伝てがあった。ナキの男とはいえ上司命令だ…許せ」

「っ!!!?ナキの、お、男じゃねぇよっ!!!だいたいテメェに子は…!」

「ふっ…我らの結束を見せるぞ古めかしい子!」

「まかせよ、せんぱいどの!」

「なにっ!!?」



いつの間にかしっかりと、互いの足を繋いでいた浅井先輩と弁丸くん

隣の佐助くんが顔面蒼白である。いつの間に弁丸くんを手懐けたんすか



「べんまる!ワシは負けないからなっ」

「それがしも、たけちよどのには負けませぬっ」

「弁丸さまーっ!!怪我はしないでくださいよーっ!!?」

「…………」

『社長、先輩と弁丸くんを見てどうしました?』

「上様は早く甥か姪が見たいのよ。そっちに関して音沙汰ないのよね」

『それ、私じゃなく妹さんと浅井先輩に言ってください』




よーい……どんっ!!



「行くぞ竹千代、左足だ!」

「ああっ!!せぇのっ、うわぁっ!!?」

「うぉっ!!?」

『おぉう…』



開始早々、一歩目で綺麗に転けた片倉くん竹千代くんコンビ

うん、これぞ二人三脚だよね。さすが期待を裏切らないね君たちは



「ひ、左って言っただろっ!?なんで右足を出すんだっ」

「え、こじゅうろうの左だから、ワシは右じゃないのか?」

「テメェに合わせて俺は言ったんだよ!ガキが裏を読むなっ!!」

「わ、分かった!」

『あー…だいぶ出遅れちゃったか』



二人が立ち上がってる間に他の親子はどんどん進んでいく

その先頭は言わずもがな弁丸くんと浅井先輩コンビである



「いち、に、いち、に…良いぞ古めかしい子!」

「うむっ!!見ていてくだされ、おやかたさばぁぁあぁぁっ!!!」

「(お館様っ!?)こ、この活躍は後日、上映会にて市に見せるっ!!!」






『社長…片倉くんたちばっかりじゃなく、浅井先輩も撮ってあげてくださいよ』

「奴を撮っても面白くなかろう」

「弁丸さまとあの人…息が合ってるよね。足も揃ってるし」

『ヤキモチかい思春期忍者。浅井先輩の足が短いだけじゃない?』

「聞こえているぞナキっ!!!」

『あ、やば』



しかし片倉くんにはもう少し頑張ってもらわなくちゃね。竹千代くんがすでに戦意喪失気味だし、うーん…



『片倉くーん!頑張ってーっ!!』

「もう十分頑張ってるっ!!」

『君ならまだ頑張れるよーっ!!本気を見せろーっ!』

「言うだけなら楽だがな!」

『んー…浅井先輩たちに勝てたら、何かご褒美あげるからさーっ!!』

「なっ―…!!?」

「ヒヒヒッ!片倉、何故急にやる気を出した」

「っ!!!?」

『あ、ちょ、邪魔しないでくださいよ刑部さん!』



私が片倉くんに呼び掛けていると、隣から刑部さんがチャチャを入れてくる。立ち上がりかけた片倉くんが膝をついた



『片倉くーん!私ができることなら何でもやってあげるからさ!』

「何をさせるつもりよ、片倉。ナキを好きにできるとは羨ましい条件よなぁ、ヒヒヒッ」

『語弊がっ!!とにかく一等賞の旗を貰って来てーっ!』

「物でナキをつるつもりか、それとも色目か、ぬしもたいがい策士よ」

「う゛……」

『ぎょ・う・ぶ・さん!』

「ヒヒヒッ」




…この後、片倉くんが走れたわけがない





20130505.
⇒続く


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