働かざる者何とやら


『浅井先輩、戸籍が無くてもていよく稼げるバイトってありますか?』

「どんな人間に働かせるつもりだっ!!?」



昼休み、先輩に相談したらコーヒーを噴き出された

そろそろ慣れてくださいよ



「ま…まさか例の同居している男か?」

『片倉くんですか?そうですね…佐助くんはまだ働かせるわけにはいきませんし』

「そ、そうか…」




家の問題の次は食費。育ち盛りを抱えてちゃ私一人の給料で養ってはいけない

そして片倉くんは前からそこを気にしてたからね。バイトがあれば一石二鳥じゃないかと


ただ…まさか戦国武将をバイト面接に行かせるわけにもいかず



『ちょっと訳ありで普通のバイトはできないんです』

「人を見た目で判断したくはないが…確かに訳ありには見える」

『ヤクザじゃないっすよ』



バイトによっては家でちびっこも手伝えるしね。弥三郎くんは手先が器用だし

お弁当を摘まみながら悩んでいると、ぬっと明智部長が現れた



「ふふふふ、お困りですかナキさん」

『まぁ少し。今日もコンビニ弁当ですか部長』

「ええ、そう言うナキさんのお弁当は可愛らしいですね」

「ああ…今までと違うな」

『なんと、佐助くんの手作りです』

「あの生意気な子供かっ!!?」



はい、かつて先輩に飛び蹴りを食らわせた佐助くんです

なんか料理に目覚めたらしく、最近は美味しいお弁当を作ってくれている



『あはー、可愛い嫁をゲットしちゃいました』

「…まぁ、貴様の弁当はいつも茶色だったからな」

『先輩は今日も黒々とした愛妻弁当ですね』

「うるさい!」

「私は茶色でも黒でも、ナキさんの手料理ならむしろナキさんごといただけますよ!」

『あ、見てくださいタコさんウインナー』

「無視をしてやるなっ!!」



手の込んだそれをいただきつつ、話を戻そうと思います

とにかく、身分証明が必要じゃないことが最低条件。あとは片倉くんと…刑部さん、彼らができる作業ってことが問題か



『パソコンうんぬんも使えない人なので』

「今時珍しいな…事務作業は無理か。営業はどうだ?」

『カタカナ含め、イングリッシュも喋れませんよ?』

「…貴様の子が古めかしい理由がよく解る。だがそうなると仕事はかなり限られるぞ?」

『ですよね…』

「ああ…ならば、内職のようなものはいかがです?」

『内職…心当たりあるんですか?』



何か思い付いたのか、ニヤリと笑う明智部長。あれ?嫌な予感しかしないぞ?



「我が社は事務作業に手間取っているのが課題ですから、その雑用的なものをお願いしたいんです」

『事務作業…でも、パソコンも何も…』

「封筒の宛名書きや切手貼りもそうですよ」

「兄者は趣味で菓子会社の経営もやっているからな、それも含めばバイトは山ほどある」

『ああ…あの金平糖の大量生産ですか。趣味のレベル違う』

「ナキさんのお願いなら、社長も仕事を回してくれますよ」

『………』








『片倉くん、』

「っ……な、何だ?どうした?何かあったか?」

『え、ちょ、なんでそんなに慌ててんの?』

「お前が俺を真面目に呼んだ、それだけで警戒に値するだろ」

『私を嘗めてんのか堅物男子!…まぁ、ちょっと真面目な話なんだけど』

「どうした?」

『あのさ…内職って頼んでいい?』

「…………?」




夕飯の後、片倉くんを捕まえて話の経緯を説明する

生活費の話、会社が簡単な仕事をくれる話、真剣な顔で聞いていた片倉くんは最後に頷いた



「そりゃこちらこそお願いしたい。ナキに頼りっぱなしなのは悪いからな」

『ありがと、家での作業だから皆でできると思うし』

「ああ…佐助や弥三郎も喜んで手伝うだろうな」

『子供たちは宗兵衛くんに任せるとして…もう一人』

「大谷か?アイツも断りはしねぇだろ」



いや、そこは心配してないんだけど…いくら簡単な仕事とはいえ給料が発生する

怪しい我が社であったとしても素性の解らない人に仕事は回せない。ある程度の契約は必要


だから…





『明日…皆で会社に行くことになりました』

「………は?」

『あはー、皆でお出かけ楽しいね!刑部さん用に杖も買っちゃいました』

「ちょっと待て!ガキ共も連れてか?」

『松寿くんは嫌がるだろうね、でも他の子は絶対に行きたがるでしょ?』

「だからって…!」

『だって部長の交換条件がそれだったんだもん!』

「もん、とかテメェが言うんじゃねぇよ気味悪いなっ!!」

『それこそ今は関係なくないっ!?とにかくご託は受け付けません!』




行くしかないでしょ織田貿易!

不安しかないこの状況に、私たちは揃ってため息をついた







20130416.
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