アイドル科の王さまと普通科の娘 | ナノ

アイドル科の王さまと普通科の

Act.60  捩じれて復元する世界が心地良い

レオを帰り道を歩む。
別に約束してなかったけど、今日もひょっこり橙色の尻尾が見えた。


「なあ、ナマエ!」
「なに。」
「明日出掛けよう!」
「突然どうしたの?」


いつものことだけど。
事前に出かけよう、と言われることが珍しくて思わず訊ねてしまう。
だっていつも唐突に当日押しかけてくるのに。変なの。


「どこがいいかなー海かなー山かなー。」
「え、遠出?」
「近くでもいいぞ?」
「何したいの?」
「何でもだ!」


よく、わからない。
まあいつものことかと頷く。


「いいけど、あんまり遠すぎると困るかも。」
「なんで?」
「宿題終わってない。」
「今からやればいい。」


無茶を言う。
溜め息を吐いてレオに視線を向けると、きょとんと首を傾げられた。


「……頑張ってはみるけど。」
「じゃあ決まりだなっ♪ どこ行くか〜イタリア? フランス?」
「え海外?」


ちょっとレベルが違い過ぎるかなぁ……。


「往復一日以内ね。」
「えぇ〜?面白くないだろ。」
「何が。遠いのは、困る。また今度ね。」
「また今度……。」


何を考えているのか、レオはん〜と唸った後にその唸りが音楽へと変わっていく。
次第にステップを踏みながら私の前方を歩いている姿は、まるで自由の塊だ。



「ナマエ!」
「次はどこをセレクト?」
「ナマエの家だなっ!」
「結局?まあ、いいけど。」


レオが上がり込んでくるのなんて日常茶飯事だし。
でもそれって、普段と変わらないんじゃ……ああ、それがいいのか。


「じゃあ、私は宿題してるわ。」
「面白くないだろ!それじゃあ!俺が!来るんだから!」
「えぇ?急になに?」
「一緒に遊ぼう!」
「何して遊ぶの。」
「曲作りだなっ♪」


私が役に立たないの、知ってるくせに。
それにレオの曲はレオの世界で生まれるんだから、そこに私はいらない。
私はただその傍で見守ってるだけでいい。


「あ!」
「次は?」
「俺も宿題、あった!」
「……一緒にしよっか。」
「えぇ〜?」
「えぇ〜じゃないよ。終わったら遊ぼう。」
「コーヒー淹れてくれ!」
「ご自分でどうぞ」


わはは、そりゃそうだ!
なんて楽しそう。大した会話はしていないのに過ぎる時間はあっという間。
たぶん、この空気間とか、なんでもないやりとりが、私は好きだったりする。





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