アイドル科の王さまと普通科の娘 | ナノ

アイドル科の王さまと普通科の

Act.59  拗れたのは抹茶含有者

『ルカ』がレオの妹……。
未だにぱっとしないけれど家族にはあんな感じなんだ。
知らなかった。

ここにきてレオの知らない一面が見えたことに戸惑いが隠せない。
ナルちゃんは買い物の最中も楽しそうにしたけれど、私の中の戸惑いは消えなかった。


「おっ、ナマエ発見!」
「だから何で茂みから出てくるの。」
「わはは☆ 俺だからな!」
「訳わからん。」


翌日の帰宅途中にまた茂みからレオが飛び出してきた。
本当に、こんなわはは状態なのに電話越しでの態度は何なのだろう。


「ねえ、レオ。」
「んぁ?」
「本物の君はどっち?」


気になった直球で問う。
突然の疑問の投げかけにレオはきょとんと眼を丸めた。
先程まで開けていた口から八重歯が覗いていて、純粋に可愛いと思える。


「ナマエ、お前……。」
「……。」
「わはははは!! 遂にお前もこっちに来たか! 届いたか!!」


なにが?
レオは途端楽しそうに声を大きく上げて笑う。
うん、傍から見たらおかしな人だから止めてほしい。


「本物の俺はどっちかなんて俺にも分からん!! だから探し続けるんだ、広い宇宙の中でひたすら浮遊して!」
「はぁ。」
「だからお前も来てくれるのが嬉しいぞ!」


いや行ってないけど。
レオは何だかテンションが上がって私の両手を握り締めて上下にぶんぶん振り出した。
うん、腕が痛いよね。


「そもそも『どっち』というのも可笑しいな。俺は一人だがきっと数多の存在が俺の中には在って、本物を問うのは宇宙の真理を解くのと同じことだ! つまり難しい!」
「難しいの好き?」
「大好きだ!!」


全く分からないけれど、レオが嬉しそうならいいかな。
紳士的なレオも、純粋無垢なレオも、こうやって可笑しなレオも。
どれも私にとっては落ち着く存在であるし。


「もう帰るの?」
「おう! 今日は寄り道するぞ!」
「私も?」
「行かないのか?」
「行こうかな。」
「だろ!」


だろって何だろう。
私が行くこと前提になっているのが面白い。
同時に、少し嬉しいかもしれない。


「どこ行くの?」
「ドーナツ!」
「老舗の?」


前に我が家で食べたドーナツをお気に召したらしい。
楽しそうなレオの隣を歩きながら路地裏に向かうと、唯一の店員であるおばあちゃんが顔を出した。


「スミコちゃーん、来たぞー!」
「おやまあ、レオちゃん。待ってたよぉ。」


ウチの親ならず老舗のおばあちゃんとも親しい上に名前呼び。
レオ、コミュ力高すぎ。


「今日はどれにするんだい?」
「詰め合わせ!」
「はいよ。お嬢ちゃんも食べていくかぇ?」
「あ、はい。」


何故か奥に通されて席に座る。
スムーズな動きに驚きを隠せない私がいるよね。
運ばれてきたお茶と、お皿に積まれたドーナツが提供される。
それは前に私の家で食べたドーナツと同じだった。
美味しいよねこれ。


「なーナマエ。」
「ん?」
「前にセナとナルと出かけたんだって?」
「うん。」


なんで知ってるんだろう。
抹茶味のドーナツを頬張ったレオの視線は、なんだか怪しい。


「最近やけに仲良いよなー。」


その言葉に、はっとした。


「……拗ねてる?」
「拗ねてる!!」





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