アイドル科の王さまと普通科の娘 | ナノ

アイドル科の王さまと普通科の

Act.49  太陽出現、スイッチ切替ギミック

アイドルの朝は早い。
そんな彼らよりも更に早い時間に目覚ましを2個セットして、なんとか起床できた。
すぐに朝食が人数分が揃っていい香りが漂った頃に、階段を下る音が耳に入る。
誰だろうと振り向くと、司くんが少し眠たそうに欠伸を押し殺したところだった。


「おはよう、司くん。」
「っおはようございます、お姉さま!」


けれど声をかけると彼の瞳は大きく丸まって、すぐに微笑んだ。
明るく落ち着いた挨拶を送ってくれると、すぐに眉を下げて


「昨夜は大変失礼いたしました。心配をおかけしてしまい、申し訳ありません。」


と、謝罪が届く。
別に気にもしていないのに、律儀だ。


「ううん、元気な挨拶嬉しいから良し。」
「お姉さまは心優しい方ですね、朝食まで感謝いたします。」
「今の私の仕事だし。さ、座って。きっと他の皆も下りてくるころだと思うから。」
「いえ、お手伝いいたします。」
「え、」
「昨夜の御詫びとしては、小さいことでしょうが。」
「嬉しい、ありがとう。」
「はいっ♪」


愛らしく微笑む彼に、箸やコップを出してもらう傍ら、盛り付けを完成させる。


「あの、お姉さま。」
「んー?」
「昨夜は……、」
「あの後?」
「はい。」


サラダをテーブルへと運び、司くんを振り向く。
彼はどこか気まずそうに、申し訳なさそうに視線を落としていた。


「夕食食べ終わった後、すぐに帰った。」
「そうでしたか……。先輩には失礼なことをしてしまいました。反省しなければなりません。」
「英智さんは全く気にしてなかったよ。」


むしろ、彼はどこか楽しそうに笑っていた。


「思わぬ収穫で驚いた、って言ってたけどね。」
「そ、それはっ……いやっ、決してそうでは! ……ああ、でももしかしたら……。」


訝しげに顔を顰めたと思ったら、次は首を大きく横に振る。
その後、深刻そうな表情尾浮かべて顎に手を当て考え込む。
朝から司くんの表情は酷く忙しない。


「大丈夫?」
「はっ、はい。何も問題ありません。すみません、soupを運びますね!」
「ん、お願い。」


考えが纏まったのか否かは定かでない。
多分、少し眉が寄っているから後者であろう。


「あらあら、いい香りじゃないっ!」
「朝から凄い量。」
「おはようございます、鳴上先輩、凛月先輩。」


次に下りてきたのはナルちゃんと凛月さん。
何故かナルちゃんが凛月さんの背中を押しながら下りてきた。


「ん、おはよ……♪」
「おはよう、司ちゃん、ナマエちゃん。」


彼らにはすぐに席に座ってもらうようにお願いした。
司くんにも、同じように誘導する。
もう十分手伝いはしてもらったから。


「後は瀬名さんとレオだけだけど……。」
「Leaderはともかく、」
「セッちゃんがいないのは意外だなぁ。」
「どうしたのかしら?」


なんだかレオの扱いが凄い。とはいえ、これには私も同感だ。
もしかして瀬名さん、昨夜充分に休めなかったのだろうか?
それで、睡眠時間が足りなくて……?


「私、見てくる。」
「いえ、お姉さまの手を煩わせるほどのことではありません。ここは私が参ります。」
「でも……、」
「行かせてください。」
「いいんじゃない? ここは任せて、先に食べてよ。すぐ練習なんだし。」
「あら? リツちゃんったら珍しいのねェ。でもアタシも同感だわ。」


2人にそう言われたら、これ以上司くんを引き留めるわけにはいかない。
お願いします。と司くんに言葉を放ち、彼が頷いたと同時だった。
階段の上からドタドタという慌ただしい音とともに、苛立ちを露わにした声が聞こえたのは。


「あ〜もうウザいってば! 早く歩いてよねぇ。」
「待てっセナ、ダメだ! これ以上先に進んだら忘却の路線を歩むだけで世界で輝くはずの曲が失われてしまう……!」
「一度失った方があんたのためになるっての!」
「なんでそんなことを言うんだ! ってあ、待て、ペンを返せッ!」
「ところ構わず書こうとしないでよ! ほんっと迷惑、公害、邪魔ぁ〜!」
「セナ!!」


…………。


「朝からhardですね……。」
「元気だねぇ。」
「仲良しよねェ。」


……若い。





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