アイドル科の王さまと普通科の娘 | ナノ

アイドル科の王さまと普通科の

Act.4  ぶれない芯を捜している


「あ、」
「こういうのは早い者勝ち、だ!」


自分が作ったわけではない、けれど自分のモノが、彼に奪われる。
相変わらずの眩しい笑顔を浮かべながら、ソレは彼の口の中に納められた。


「ナマエは食べるのが遅いな。もっと食べた方がいいぞ!」
「そっちが早いだけというか……流し込むように食事している人と一緒にされても。」
「わはははは☆ それもそうだなっ!」


彼と初めて出会った後、何度か再会を重ねた。
もちろんお互いに連絡を取り合ったわけではなく、全てが偶然だ。

校門前、コンビニの中、公園での散歩中。
さまざまな場所で、彼と遭遇した。


「にしても美味いな。なんだ、料理上手か!」
「残念ながら冷凍食品です。」


最初はまだ『変わった人』なのだ、としか思わなかった。
ある程度経ってからアイドル科の人間だと知って、この輝きはソレなのかと納得した。
その後で、とある『ユニット』でリーダーとして活動していることを聞いて、妙に大丈夫なのかと不安を覚えた。
更にその後で、彼は何かと戦っていることを強く熱弁してくれていた。

そして、暫くの時をあけてから――


「うう〜惜しい! 惜しいぞ、ナマエ! どうしてそう自分の才能を殻に無理やり閉じ込めようとする? この広い世界、無数の可能性が点在する中で唯一手元に掴めている己の才能をゴミ箱捨てている状態だぞ! 生ゴミだぞ! 廃棄処分になったらもう戻ってこないんだからなっ!」
「はいはい、すみませんでした。」


彼はがらりと『変わった』。


「ナマエは聞き流すのが上手いな! それも1つの才能だが、ここはアブダクションされる前におれの言うことに耳を傾けてみるといいぞ。今まさにおれの脳へ呼びかけてきている宇宙からの交信がおまえを執拗に狙うかのような熱意を宿している! このままではナマエの人格が変わってしまう恐れが……!」
「多分、偶然。」
「偶然もまた必然だが、あえて偶然を選んだのはなんでだ? いや、待って! 今、考えるから、憶測するから、妄想するから待ってくれ!」


けれど、その変化を彼自身が拒む様子はない。
だから、こちらも拒む気もなかった。


「ねえ、今日は練習いいの?」
「ダメだ!」
「なら行った方が、」
「もう少しで答えが出そうなんだ!」
「……あ、そう。」


本当は何も変わらない。


「何やってるの?」
「答えを導く過程でいい案が浮かんだっ!」
「で?」
「書き留めている☆」
「地面とか書きづらいでしょうに……。」
「爪に土が入り込んでいるなッ!」


常に、彼の中には音楽という芸術がある。


「貸してあげる。」
「おおっ、さすがナマエだな! そういうところ大好きだ! 愛してる!」
「はいはい。」





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