アイドル科の王さまと普通科の娘 | ナノ

アイドル科の王さまと普通科の

Act.47  進撃を誘導する罠なのか


「ん〜、これあげる。」
「あっ凛月先輩、私のplateに置かないでください!」
「ちょっとぉ。なんでエビないわけぇ?」
「やだ、この前食べたばっかじゃなァい。」
「なんでなるくんが知ってんの。」
「ウフフッ♪」
「あっLeaderまで……!」
「美味いぞ、食え!」
「なら私のplateに入れず、ご自分で食べてください!」


うん、にぎやかだ。


「ふふ、楽しい食事だね。」


ごもっともです。


「んで? 用件ってなんだ。」


ご飯を頬張ったレオが、小首を傾げる。
どうやら少し機嫌は直っているようで、不機嫌そうな表情は見られない。


「今日から『Knights』がここを借りているだろう?」
「そうだけど。手続きならあの子がしてくれたらしいけどね。」
「なるほど、だからかな。」
「え?」


英智さんは十分な咀嚼をしてから箸をおいた。


「責任者の欄に記載が無かったらしくてね、警備員も見逃して承諾してしまったらしい。」
「あらま。」
「これを昼ごろに佐賀美先生に問われてね。今回は見逃すけれど、今後は気を付けるようにと伝達を頼まれて、伝えに来たんだ。」


「そしたら、」と英智さんの視線が私へと向く。


「彼女がいたから思わず、話し込んでしまったというわけさ。」
「思わず、ねぇ。」
「なんだい?」
「別にぃ〜。」


レオがやけに、英智さんにつっかかる。
どうしてだろう。英智さんのことを無害とは限らないって、『皇帝』だからって……って。


「あ。」
「ん?」
「どうしたのかしら、ナマエちゃん?」


声に出てしまったものだから、皆の視線を浴びる。
唯一、凛月さんだけが食事に夢中だけれど。
しかも瞼が閉じかかってる……眠いのだろうか。


「『皇帝』、さん?」
「そうだね、そう呼ばれているよ。」
「……『皇帝』って……あの『皇帝』?」
「かな。」


思わずレオを見て、ナルちゃんに視線を動かした。
ずっと前に言っていた言葉が過ぎる。


――「やっぱり、『皇帝』を降ろしてから見せたかったのかしら?」


……その『皇帝』が、英智さんで。
レオが降ろしたかったという人物?
そう言えば【ジャッジメント】の時、英智さんがいた。
その英智さんに向かって、何か彼が言っていたのを覚えている。


――「それでも、おれにとってまだ『皇帝』は『皇帝』なんだ。」


そうレオが言っていた意味を、ようやく理解できた気がする。


「ナマエちゃん?」
「あ、」
「大丈夫ですか、お姉さま。もしや具合が悪いのでは?」
「ううん、大丈夫。ありがとう。」


どうしてあんなにレオが不機嫌そうに、警戒した様子を見せていたのかも何となくだけれど。
でも、こうして『皇帝』と『王さま』が話せているのなら、きっと問題は解決……した? のだろうか。
ここは良く分からない。


「英智さん、【ジャッジメント】に出てたなって思って。」
「ふふ、ようやく思い出してくれたのかい?」
「うん。」


とりあえず、こういっておく。
間違ってはいないから。


「ナマエさんの作ってくれた青い薔薇のコサージュが気に入ってね。」
「あぁ、あれ……。」


金髪碧眼のまさに王子様、貴族様な英智さんにはよくよく似合いそうだ。
どうして【ジャッジメント】の時によく見ていなかったのだろうか。


「あ、あれはお姉さまがお作りになったのですか!?」
「うん。レオが何か欲しいって言うから、頑張ってみた。」
「あんたも相変わらず無茶言うねぇ。」
「わはは☆ それでもナマエは作ってくれたからな! 何故かおれの分だけじゃないあいつらの分まで。」


余計に、という言葉が語尾に隠れていた気がする。


「是非作り方を教えてもらいたいと思っていたんだ。だから、会えて嬉しいんだよ。」
「それはどうも、ありがとう。」
「ふふ、良かったら今度時間どうだろう?」
「私よりも鬼龍さんに聞いた方がいいと思うけど。」


苦戦して作ってる中、面白そうだと言って作った鬼龍さんの方が、早く、美しく、完成度の高いものができていた。
それにまだ、人に教えられるほどの技術はない。
そう思って、鬼龍さんを進めたけれど、英智さんは静かに首を横に振った。


「いや、出来ればナマエさんに教えてほしいんだ。いけないかい?」
「いけなくはないけど……。」
「じゃあ、いいかな?」
「まあ、それぐらいなら――、」


意外と押せ押せな人だなぁと感心していると、箸を置く音が強く高く響いた。
思わず、その方向へと視線が移る。





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