アイドル科の王さまと普通科の娘 | ナノ

アイドル科の王さまと普通科の

Act.43  平々凡々の庶民は壁と向き合う

アイドルの合宿って、なにするんだろう。
一番思いつくのは、何よりも体力増強だろうか。
どんなに歌が上手くてもダンスが美しくても、体力がないんじゃ元も子もないし。
後は、普段よりも濃い発声練習?
あ、ダメだ。分からない。


「ナマエはただ飯作ってくれればいい! プロデュースは不要だからな!」


なんて彼は言っていたけれど……。
いやいや、私が合宿に参加する意味が薄くなってしまうでしょう。
ご飯を作りだけなら、別に泊まり込む必要もない。
なんてったって場所が場所だからだ。


「せめてバランスの良い食事かぁ。」


特に『Knights』にはモデルっ子が2人もいる。
どちらも栄養価には非常に敏感そうだし、ナルちゃんに至っては数度の逢瀬でよくよく理解しているつもりだ。
それに凛月さんは、(勝手な憶測ではあるが)好き嫌いが激しそう……。
司くんに至ってはもう貴族様のようだからヘタな庶民料理なんて出したら幻滅されそうだ。

……レオには、とりあえず冷凍食品一択。


「おかーさーん。」
「なーにー?」
「アイドルの食事教えて。」
「はぁ?」


当然の反応である。
事を話すと、母は難しい顔をした。


「あんた、それ行く意味ある?」
「だよね。」


凄くごもっとも。


「でも頼まれたし。」
「アイドルの食事なんて知らないわよ。その人たちか、アイドル科の先生にでも聞きなさい。」
「ん〜、」


アイドル科の先生に聞くのがきっと一番なんだろうけど。
見事に接点がない。当然と言えば、当然なのだが。


「ちょっと出かけてくる。」
「遅くならないでよ。」
「はーい。」


まずは書店にでも寄ってみよう。
バランスの良い、栄養価の高い食事でいいかな。
カロリーとか数字を気にしないといけないよね……。
あれ、不安になってきた。できるかな。


「飲料水は水一択でいいんだよね。もう中身から清らかにしていこう。ていうかバランスの良い食事って何さもう。」
「行くなら早く行きなさい。」
「はーい。」


家を出てから、一息。
最近は自転車の規制が厳しくなったので、面倒だから徒歩ばかりだ。
そのうち廃棄処分しないといけないであろう、少し錆びた自転車の横を通り過ぎる。
と。


「あらァ?」
「あらま。」


素晴らしい偶然。


「やだァ、ナマエちゃんじゃないっ! すっごい偶然ね♪」
「本当に。おはよう、ナルちゃん。」
「おはよう♪」


アイドルのことはアイドルに聞くべし。
モデルのことはモデルに聞くべし。
まさに天からの賜物と言わんばかりのタイミングの良さ。


「ナルちゃん、時間今いい?」
「ウフフッ、勿論いいわよ〜。恋のお悩みかしら?」
「ごめん違う。ちょっと、合宿のことで。」


恋か。
初恋は隣の家に暮らしていた黒いラブラドールだったなぁ。





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