アイドル科の王さまと普通科の娘 | ナノ

アイドル科の王さまと普通科の

Act.42  順応できる者こそ『王』の膝元に

「合宿するぞ!!」


その言葉は、誰にとっても衝撃的な言葉だった。
個人技を得意とし『ユニット』活動以外は自由奔放な彼ら。
いや、活動しようにもそもそも全員が揃う日が稀だとすら聞く。
そもそもリーダーである彼がそのタイプだし、致し方ないのかもしれない。

その彼から、あまりにも予想の範疇を逸脱したこの言葉が発せられたことは、やはり驚愕であった。


「っはぁ!? あんた、ついにバッカになったわけぇ?」
「ちょっとちょっと、どうしちゃったのよォ!」
「わはは☆ おまえたちのその反応は想定内だ! だからこそ物足りない。もっと腕を広げて天高く声をあげろ! 空へ、宇宙へ届けるんだ……☆」
「いや、意味わかんないから。」


瀬名さんの冷静なつっこみが入る。


「Leader、合宿などと本気で仰っているのですか?」
「当然だろ? このままじゃせっかくおれが復帰した意味がない。それにおまえ、言っただろ。教えてもらいたいことが山ほどあるって。」
「確かに申し上げましたが! いくらなんでも急です!」
「そうよォ。それに合宿をするには先生の許可が必要よ?」
「もうとった!」
「はぁ!? ちょっと、何勝手にやってくれちゃってるわけぇ!?」


いつになく、彼が素早い……。
普段から意味不明、予測不能の『王さま』扱いだろうが、今日は特別にそう感じているのではないだろうか。


「というか、とってもらった!」
「あぁ、またあの子に頼んだんだ。」
「まあな!」
「もうっ! あの子だって忙しいんだから無茶ぶりしちゃダメじゃない!」
「わはは……☆」


はて、あの子、とは?
こちらの疑問が解決せぬまま、話が進んで行く。


「これでは既に決定事項ではありませんか……。」
「そうだぞ? だからしっかり準備して来いよ!」
「ちょっと、ドコでやるわけ?」
「海!」
「すぐそこじゃないァ〜い!」
「家からでも十分通えますよね……。」


アイドル科校舎の裏にある、大きな海らしい。
個人的に驚くのはそこではなく、特にそう、瀬名さんの順応力だ。


「ったく、俺はあんたと違って暇じゃないんだからそういうの先に言ってよねぇ。」
「悪い悪い! でもセナは受け入れてくれるって知ってたからなっ大好きだ!」
「はいはい嬉しくない言葉ありがと。で? あの子も来るの?」
「んや。どうしても外せない用事があるらしい!」
「それじゃアタシたちだけってわけね!」


ナルちゃんも対応早かった。


「んぁ……寝床……。」
「きちんとあるから安心しろ、リッツ!」
「ん、ならいいやぁ。」


凛月さんも早かった。


「ちょ、ちょっと皆様、それでよろしいんですか? 本当に!」


司くんの反応が、ごもっともだと私も良く思う。


「あら『王さま』の唐突な指示なんて、今更じゃなァい!」
「そうそう、一々まともに反応してたらやってけないよ、かさくん。」
「そんな……!」
「ふぁ、…♪」


愕然とする司くんをしり目に、彼らは見事に話しを進めていた。
なんというか、独特過ぎる。


「だが安心しろ。きちんと世話係は用意している!」
「へぇ、あんたにしてはやるじゃん。で?」
「ナマエだ!」


…………はい?


「え、ちょ!?」
「ん?」


何かおかしなことを言ったか?
と言わんばかりに、純粋な瞳でこちらを映す彼。
いやいや、慌てるよ。順応できないよ。


「前に言っただろ。『Knights臨時特別マネージャー』に任命するってな!」
「それか!」
「それだっ!」


彼はいつだって、全てが唐突な策士だ。





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