アイドル科の王さまと普通科の娘 | ナノ

アイドル科の王さまと普通科の

Act.37  策士な『王』は物語を紡ぐ

「おれはたとえどんな状況であろうと、曲を紡ぎ続ける。そう宇宙が果てしなく広がるように。オペラが産声をあげるように。例えこの身がUFOにアブダクションされようとも、例えこの身が討ち滅ぼされようとも、おれはこの両手であらゆる名曲を想像し続ける……☆」


相も変わらず、彼は今日も静かに妄想の世界に浸っていた。
時折、激しく。時折、静かに。
その時々の、彼のおもむく気分のままに、言葉は紡がれる。


「ナマエ、おまえはどこまで来れる?」
「なにが?」
「おれの世界は無数だ。どこかに留まることを知らずに無限の発展を遂げる。妄想は世界を跨ぎ宇宙へと拡散していく。……おまえは、どこまで霊感を高められる……?」


この言い方だと、まるでこちらもインスピレーションとやらを湧かせているようだから止めてほしい。
想像程度におさめておいてもらいたい。
それなら、誰でもすることだから。


「どこまで行けるかな。」
「……心配なんて不要だなっ!」
「ん?」
「おまえにはおれがついている! この果てしない世界で襲い掛かる魔物を倒すのは勇者か? 騎士か? もしかしたら小さな妖精さんかもしれない!」


彼は興奮したように舌舐めりをして、恍惚そうな表情を浮かべる。


「それでも、おまえの身だけはおれが守ってやろう。仕方がないからなっ☆」
「……ありがと。」
「王は、時として身を挺して民を守る騎士となり、時として騎士を先導する剣となるんだ!」
「今日はやけにハイテンションだね。」
「ナマエ、おまえを『Knights』特別臨時マネージャーに任命するぞ、わはははは☆」


……ん?


「え、今なんて言ったの?」
「んぁ?」
「いや、だから今なんて言ったのって?」
「仕方がないからおれが守ってやろう!」
「いやそこじゃない。」


狙っているのだろうか。
大口を開けて、至極楽しそうに笑顔を浮かべる彼を睨む。


「なんだ?」
「だからどうしてレオが疑問そうに言うの。私が言いたい、疑問ぶつけたい。」
「いいぞいいぞっ☆ 話は後で聴くからな!」
「絶対聴かないでしょ。」


彼の暴走すると周囲を見聞きしないところは本当に変わることがないようだ。


「私の耳には『Knights特別臨時マネージャーに任命する』って聴こえたんだけど。」
「あぁあ、」
「レオ?」
「広がっていく……霊感が広がっていく、妄想が世界を包む……!」


……このタイミングでですか。


「わはははは☆」
「……。」


どうやら、ナルちゃんに連絡をとる他ないらしい。


「うっちゅ〜☆」





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