アイドル科の王さまと普通科の娘 | ナノ

アイドル科の王さまと普通科の

Act.34  近づく連休は誰もが至高


来月の楽しみは、第一週の土日月で3連休があることだ。
学院創立記念日がちょうど月曜日に来てくれた。ありがたい。


「おおお?」
「……ふぁあ、」


早くも私の中には連休モードがやってきて、どうにもテイタラクになってきている。
隣の彼は、そんなの関係なしに元気いっぱいであるが。


「おおおお! 浮かぶ、浮かぶぞ! 今、おれの頭の中に巡っているこの情景こそまさに曲を作り上げる土台! 微かに聞こえるこの声はなんだ!? 精霊か? 宇宙人か!? うっちゅ〜☆ 何をおれに投げ掛けようとしているんだ!?」


霊感を湧かせるのは勝手ではあるし、それが彼らしさだからいいにはいい。
けど、


「ちょっと、さすがに声大きい。」


この声を聞きつけて警備員や先生が来たらどうするのだろう。
普通科の先生はまだ甘いから、一度は見逃してくれるかもしれない。
けれど、アイドル科の先生は非常に厳しいと耳にしている。
こんな些細な逢瀬で、彼が退学なんて話に発展したらシャレにならない。

そんなこちらの思いは、彼には伝わらないらしい。
がるる……と、威嚇するような瞳で睨みつけられる始末だ。


「う〜話しかけるな邪魔するな。今声を聞いているんだからな!」
「あそ、じゃ私帰る。」
「あ、どこ行くんだ!」
「邪魔するなって言ったのそっちじゃない。」


気のせいでなければ、アイドル科に配属された警備員の数が増えている。
もしかしたら今までには無かった、この場所の見回りにも来るかもしれない。
大声なんて出されたら、堪ったものじゃないのに。


「ダメだダメだ! おれの傍から離れるな。せっかく囁きかけている声が遠のいてしまっている……!」


頭を大きく振ると同時に、短い尻尾も揺れるものだから愛らしい。


「それ、関係ある?」
「んん〜待てよ〜? もう一度耳を澄ませなければ!」
「……はあ。」


今日も今日とて、通常運転。
彼と私のこの逢瀬場所を知るのは、そういえば瀬名さんと鬼龍さんだけか。
せめて卒業するまで、この場所は自分たちの秘密基地にしておきたい。





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