アイドル科の王さまと普通科の娘 | ナノ

アイドル科の王さまと普通科の

Act.29  王の入城。騎士が進軍し、優美に舞う


ステージに立つ彼は、大きく口を開けて酷く楽しげに振る舞っていた。
赤と青に分断された巨大なステージ。
対面するのは王と仕えるべき騎士。
本当に、彼らが戦い合うのだとひしひしと感じる。


「おれが『Knights』の『王さま』だ! 月永レオさまだっ、わはははは☆」


高らかに笑い、彼は前髪をくしゃりとあげる。

しかしまぁ……。
舞台には『Knights』が着ると勘違いしていた黒衣の衣装を纏う知らない方々も立っていた。
いや、一部知っている。鬼龍さんだ。あの鬼龍さんが、まさかの出場とは……。

【ジャッジメント】は、互いのユニットのどちらが全滅するか、どちらかの『王』が倒されれば終幕を迎えるという。
『Knights』の『王』は『かさくん』という人物らしく、以前ナルちゃんが言っていた新人くんだろう。
そして『Knights』に対抗すべく結成された『ナイトキラーズ』の『王』は言わずもがな、彼。


「朔間さんは、どっちが勝つと思う?」
「そんな硬い呼び方はむず痒いのぅ。零で良い、零で。」
「はぁ……。」


細長い指に、黒い髪を巻き付けて、零さんはほくそ笑む。


「月永くんは天才じゃ。曲を生み出す才も、それを引き立てる力も兼ね備えておる。それゆえの『王』。」
「あんななのに、本当に大物。」
「対して『Knights』の面々は、そんな『王』に仕えてきた一騎当千の強者どもじゃ。そして武器は、」
「……新人、さん?」
「そうじゃ。あれもいれての『Knights』で彼らは戦い続けてきた。月永くんのブランクは大きいじゃろうて。」


どっちが勝っても負けても、おかしくないということだろうか。
思わず握っていた手に力が入る。

彼らの談話が進む中で、白と紺の衣装を身に纏った瀬名さんが場の雰囲気を変えた。


「こっちはまず俺となるくんが出るけど。そっちは、最初から四人全員でくるってことでいいのぉ?」


遂に、始まるのだ。


「こちらは、まずは仁兎くんと鬼龍くんが出陣する。そういう作戦だったよね、月永くん?」
「おいおい、今回はおれが『王』なんだからな〜。仕切るなよ。」


知り合い同士が対立するのを見て心苦しいわけがない。
それ以上に、彼がこれに何か強い思いをかけている事実が一番、胸を締め付けてくる。


「こっちからはまずクロとナズが出る。二対二の、公平な対決ってわけだ。」
「数を揃えてくるなんてなまいきじゃん……。」


戦いの果ては、どうなるのか。
初めてのステージ。初めての【ジャッジメント】。初めての戦いに、生唾を飲み込んだ。


「さぁ、来いよ!」


『王』は口角をあげ、外套を翻した。
そして右手は、左胸に咲く青いバラへとそえられる。





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -