アイドル科の王さまと普通科の娘 | ナノ

アイドル科の王さまと普通科の

Act.2  ほら、脳が素早く察知する


「はァい、ナマエちゃん♪」
「あらま。」


思わず目を瞑ってしまうほどの輝かしい微笑。
口がぽかんと開いたままに気付いたのは5,6秒後だったか。


「久しぶり〜元気だったかしらァ?」
「うん。一昨日の雨を全身で受けた身だけど元気。」
「ま! 帰ってからすぐにお風呂に入ったの?」
「ん〜……寝ちゃった。」
「風邪ひいちゃうわよォ! 女の子なんだから、もっと気をつけなと!」


自分とは比べ物にならない程の透き通った肌。
吹き出物なんて一切見当たりもしないのに対して自分は、とつい考えさせるほどのそれ。
きっと触れたら、指が離れたくないと叫ぶほど気持ち良いのだろう。
頼めば快く了承してくれそうだが、どうしてもそれは憚られた。


「で、わざわざどうしたのナルちゃん。」
「ふふっ、顔を見にきただけよ!」


それもそのはずだ。
目の前にいる『彼』は、由緒正しき当学院アイドル科の学生なのだから。
それも『Knights』という『ユニット』に所属している程の実力を持っている。


「本当にそれだけなら凄く嬉しくて発狂してた。」
「あら、嘘だって思うのかしらァ。」
「ううん。でも、本題は別にあるのかなって。」
「うふふ、さすがだわァ! ちょっと聞きたいことがあってきたの♪」


彼とは、とある縁があって親しくさせてもらっている。
ただの普通科の変哲もない女生徒を、わざわざ離れで待っていたのだ。
一体どんな用事なのか――

一目につくと面倒なので、場所を変えて話すことにした。


「あらやだ、こんなに美味しかったかしら。」
「サラダ?」
「そうそう。前来た時とは比べ物にならないわ。」


彼の言う前とやらがどれぐらい前なのかが分かってしまった。
よくもまぁ、1年以上前のサラダの味を覚えているものだと感心してしまう。


「ちょうど1年前にリニューアルオープンになったの。」
「野菜も変えたのね?」
「みたい。よく分かったね、ナルちゃん。」
「当然よ〜! 食べるものには十分に気を遣ってるもの♪」
「さすが。」
「ふふ、でしょ〜?」


楽しそうに食事をする彼は、どこの女性よりも女性らしく輝いていた。


「それで、忙しいなか私に何の用事?」
「あら。急かさないでちょうだいよ♪」
「でもナルちゃん、本当に忙しいんじゃないの?」
「まァねェ……だからこそ、休養も大事にしたいじゃない?」


つまり、彼はこの時間を休養だと思ってくれているらしい。
これはとても嬉しい話だ。


「それにナマエちゃんとこうしてお喋りするの久しぶりだし。」
「確かに。」
「アタシからしか会いに行かないじゃない? 偶にはおいでなさいよ〜!」
「アイドル科の校舎には入れないわ。摘み出される。」
「ふふっ、冗談よ♪ でもナマエちゃんに会ってたくさんお喋りしたかったから、本当に嬉しいわァ♪」
「うん、私も。ナルちゃんが元気そうで良かった。」


キウイジュースで喉を潤わせて、彼の言葉に同意するように頷く。
すると彼は、更にぱっと笑顔をまき散らした。


「んも〜! 嬉しい〜♪ お持ち帰りしちゃいたいくらい♪」
「それは困る。」
「うふふ、これも冗談よ!」
「ほんとかなぁ?」
「やだ、嘘だってバレちゃったかしら?」
「今のでバレたわ。」
「ふふっ♪ バラしちゃったわね!」


何気ないやりとりが、本当に楽しい。
それもこれも、やはり彼と過ごす時間が久しぶりだからだろう。


「それでね、ナマエちゃん。」
「ん?」
「聞きたいことがあるのだけれど、いいかしら?」
「もちろん。」


少しだけ困ったように眉を下げたその表情に、何故か脳は用件を察した。


「『王さま』の行方、知らないかしら?」





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