アイドル科の王さまと普通科の娘 | ナノ

アイドル科の王さまと普通科の

Act.1  変革の風は届かない


ここ最近は、毎日のように晴天だった。
だからなのか、今日のような雨をやけに鬱陶しく感じる。
傘を持たないこの身では、髪や服が肌にべっとり纏わりつくのであろう。
その事実が、更に曇天を恨めしく思わせる。


「ね、行こ!」


電灯がなければ真っ暗な状態にすらなる空間中で、女生徒の明るい声は際立つ。
チャイムが鳴った途端にがやがやと教室が賑やかになるのは毎日のことだけれども、今日という日はそんな毎日の中でも特別な日だ。

もっとも、その特別な日も、ある日を境に頻繁に生じるイベントとなったのだが。


「ナマエも行くでしょ!」
「パース。」
「ええっ!? あんたそれ、前の『Ra*bits』の時も言ってたじゃない!」
「あんたの推しはどの『ユニット』なわけぇ?」


推しがある前提なのか。
さすが女生徒間の会話だ。


「っと、そろそろ行かなくちゃ!」
「今日こそは最前線よ……!」


これから戦場にでも行くのか。
と、思わせるほどの形相で彼女たちは教室を立ち去る。
廊下が慌ただしいが、暫くすれば静まり返るのは分かっている。


「今日は……『Trickstar』だっけ?」


この学院の混沌としていたアイドル科を――いや、アイドル科のみならずこの学院そのものに『革命』を巻き起こしたという『ユニット』。
詳しいことは分からないが、今年に入りこの学院は目に見える形で大きな変化を遂げた。
それは確かにいい流れを運んできていて……。


「どうしよ、傘。」


それでも、この心にその変革の風が通らなかった。





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