アイドル科の王さまと普通科の娘 | ナノ

アイドル科の王さまと普通科の

Act.27  開幕が近づいた、銅鐸を打ち鳴らせ


意識はふと、意図せずに浮上する。
視界に入ったのは木目。次に白い紙。そして、ペン先。

重い上体を起こすと、勉強中に寝てしまったことを悟る。
課題を終えて安心するも、テストのために睡魔と闘っていたのだ。
結果としては、敗北……なのだろうか。


「もう、朝……。」


少しだけ慌てて時計を見るが、時間は普段の起床時刻よりも少し早い。
ほっとしながら、窓の方へ視線を向ける。
ベージュのカーテンが太陽の陽射しを受けて明るく輝いていた。

椅子から立ち上がり、そのカーテンを左右にひく。
途端に襲ってきた陽射しに思わず目を細めたが、少しずつ順応していった。
普段と変わらない景色ではあるが、何となくいつもよりも明るい。


「……きれい……。」


今日は快晴と呼べる日だ。ほとんど雲が無い。
空は青というよりは水色一色で、時折白い雲がそれを覆う。
そんなキャンパスで何よりも輝いているのが太陽。
赤の発光よりも、今日は橙の発光に映る。


「……空、太陽、雲。」


ふと、衣装が浮かんだ。
基本色が黒やグレーというダークな色合いに対しての配色。
彼の映える橙色の髪に、手に嵌められた純白の手套。
そこに加えるアクセントは何か。

すとんと自分の中にそれが落ちてきた。
少しだけ軽くなった体に制服を纏って、リビングにくだる。
振り向いた母が「おはよう。早いのね。」と目を細めたのを、受け止めて頷いた。

試験は上々の出来だったと思う。
意識が落ちる程勉強した成果か、たまたま運が良かっただけか。
今となっては、どちらでもいい。

放課後に、急いで門を飛び出す。


「よう、早かったな。」
「鬼龍さんこそ……!」


学院から少し離れた場所で、鬼龍さんと合流。
さすがに自分の判断で全てを決められるわけではないのと、サポーターが欲しかったため約束づけた。


「その顔だ、決まったみてぇだな。」
「はい。お手伝いいただけますか?」
「当然だ。」


ニッと、微笑んでくれるその姿はたくましい。
早速鞄を肩にかけて歩き出す。

材料を購入して、試作品を一緒に製作する。
衣装を作ってくれた鬼龍さんにアドバイスを貰いながら、工夫を施す。
そして再度試作品を作って、今日は終了した。

言葉しか知らない『ジャッジメント』の開幕が刻々と近づいてきた。


「なあなあ! 結局、何にしたんだ? ん?」
「秘密。」
「えぇ〜?」


練習をしつつ、アクセントが気になる彼は、度々訊ねてくる。


「だがそれもいいなっ! 待ってろ、今妄想するからっ!」
「それもいいけど、ご飯食べてね。」
「んぁ? 後だ、あと!」
「今じゃないと食べられないんだから。はい、口開けて。」
「んー!」


いつだか、彼に発想を提供した卵焼きをプレゼントする。
美味しそうに目尻を緩めて食べる彼を見て、こちらも嬉しくなる。
作ってくれてありがとうお母様。


「あ、そうだ。ナマエ、当日は特等席用意しといたからなっ!」
「特等席……?」


橙の尾を揺らして、彼は微笑む。


「今回は一般よりもおれらの方が圧倒的に数が多いと思うからさ。潰されないうちに、知り合いに同行頼んどいたから。」
「は、」


いや、え?


「変なやつだけど、面白いぞ〜☆」
「いやいや。その方とずっと一緒? 気まずくない?」
「大丈夫だ!」


何を根拠に。
というかそもそも『潰れないうち』ってなに。


「それなりの立場だし、他の連中も易々と手出してこないだろ。」
「出される可能性あることにビックリなんだけど。」
「わはははは☆」


今日も彼は、通常運転だ。





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -