「衣装デザインがこれだ。生地はこいつを使ってる。で、途中まで完成しているのが、嬢ちゃんの手にしているそれだ。」
…………。
こちら、ただいま絶賛驚愕中。
「どうした。変か?」
「あ、いえ。凄いなって。」
「これでも裁縫が得意でな。」
得意とか、そういうレベルではない気がする。
「やっぱ、変だろ。似合わないって思ってるか?」
「とんでもない。どこのプロだと驚愕中で……口が開きっぱなしです。」
「ハハッ、本当に開きっぱなしになってるぜ。」
がっつり笑われた。
「で、どうだ? 何か思い浮かんだか?」
『王さま』のアクセントづくりのために、鬼龍さんに時間を貰っている。
彼らの練習場に一度招かれそうになったが、さすがに心より遠慮させてもらった。
今は、この人が作ったという衣装とそのデザインを見せてもらっているところだ。
「やっぱり、マントはいい味出すかなと。」
「ま、目立つだしな。」
「あと何か1つ……きっとダンスとかしたらマント邪魔になると思うので、着けていても可笑しくないアクセントを加えられたらなと、考えています。」
「なるほど。確かにアイツならマントをすぐ脱ぎ捨ててもおかしくはねぇ。」
良く考えたじゃねぇか。
と、気前のいい笑顔を見せられた。
きっとこの人は本当に本当に『お母さん』気質だ。
「ただ、その先が思い浮かばなくて……。」
衣装を見て更に悩んだ、だなんて言えないだろう。
『Knights』は言葉の通りまさに騎士のような『ユニット』。
個々のレベルが高い上にファンサービスも厚く、華麗な身のこなしが魅力的だという。
そして、そんな彼らの衣装は、紺や白が目立つもの。
周囲からはそう聞いていたために、今回のデザインが想定外だった。
基本色は黒。黒。黒。
身体のラインに沿うように厚いグレーが描かれており、手には白の手套。
明らかに、紺も白も薄かった。
「……。」
今回は、趣向を変えているのだろうか?
悩ましい。
「……この上着の中には?」
「赤のシャツが合うんじゃねぇかって、今考えてる。」
「んー……じゃ、マントの裏地は赤で。表は衣装に合わせましょう。」
「そりゃいいな。長さはこっちで調整しとくぜ。」
「お願いします。」
問題はアクセント、だ。
この人の考えてくれたデザインはシンプルで、それでいて落ち着きがある。
白の手套と、金色の細い線や前留めがちょっとした豪華さを奏でている。
ズボンにも自然なアクセントがそえられていた。
ここに何かを加えるとなると、なかなか考えづらい。
「…………。」
「なかなか、思い浮かばねぇか?」
「すみません。」
「謝るこたぁねぇ。それだけ月永のこと考えてるってことだろ。」
なぜ、そう繋がるのか。
「じゃねぇと、眉間にしわ寄せてまで深く考えねぇよ。」
「……そうですかね?」
「少なくとも俺はそう思ったけどな。」
「そっか……うん。」
間違ってなんて、いない。
「もう少し、考えさせてもらっても?」
「当然だ。」
彼に華やかなステージを用意したい。