アイドル科の王さまと普通科の娘 | ナノ

アイドル科の王さまと普通科の

Act.24  不恰好な『裸の王さま』を創造する


「ナマエ。おれはナマエにやってもらいたい。」

強い、真摯な眼差しが射抜くようにこちらを見ている。
ぶれることのない芯のある言葉が、心を曝け出そうとしてくる。


「ナマエ、ナマエー?」
「あ……はい、なに?」
「ちょっとアンタ大丈夫?」
「顔色、優れないけど。」


クラスメイトに顔を覗きこまれて、はっとする。
もうすでに、放課後だ……。

今日は一度も、昨日も一度も、あの場所へ行ってはいない。
もし彼が居てあの時と同様に頼まれたら、何も返せないからだ。


「風邪引いたんじゃないでしょうね?」
「心配かけてごめん。」
「平気ならいいんだけど……。」


「気をつけなよ?」と言葉を貰って、彼女たちは教室を出た。
窓へ視線を移すと、薄いカーテン越しに夕陽が差し込んできていた。

さて、どうしようか。
机上へと視線を戻すと、スマホが目に入る。

きっとナルちゃんに聞けば今回のことを教えてもらえるだろう。
けれど彼から直接聞きたいという思いが自分の中にあった。
彼から「ダメだ」と拒まれ「待って」と求められ「招待させてくれ」と手を招かれた。

全てが、彼の思うままに動いている。
それを苦しくも感じ、それ以上に心地良くすら感じてしまっている。


「……結局、選べないんだよね。」


スマホと自分の鞄を持って、自席を立つ。
遠くから歓声が聞こえた。

今日はどの『ユニット』が輝いているのだろう。
きっとこの煌めきよりも数倍のものが、自分を待っているに違いない。


「レオ!」


高らかに名前を叫ぶと、きょとんと橙色は目を瞬かせた。


「後2日だけ待ってて!」


期間は既に1週間をきった。
残り短い。そんな中、2日の猶予を求めた。


「ナマエ?」
「素人のフィーリングでいいなら、用意してみせるから。」


こちらの意図が通じたのか。
彼は目を大きく広げて、次の瞬間、顔をくしゃりと歪ませた。


「ありがとうナマエっ、大好きだ!!」
「不恰好になっても、文句言わないでよ。」
「不恰好な『王さま』も上等だ。おれは、『裸の王さま』なんだからなっ!」


何枚もの譜面を抱いていた手を広げると、白い紙が宙を舞う。

ああ。この人のこういう顔が、見たかったんだ。





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