彼のステージに、素人は要らない。
「なんでだ? 心配はいらないぞ、クロがいるからな!」
「他力本願か。」
「四字熟語いいな! ん? ……!」
あ、きたな。これは。
「も、もう少しで……そう、おれの世界が広がって妄想が宇宙へと届きそうだ!」
「……。」
「ん、んン……!」
…………。
「んぅう〜!」
…………。
「〜〜〜っダメだ! 途切れる!!」
「そうかよ。なら嬢ちゃんの話を聴いてやれ。」
この人いい人だ……。
凄い。こう言ってはなんだけれど、まともだ。
「よし分かった。で、何がどうなんだ?」
「聴いてなかったでしょ。」
「ああ!」
「ダメだこの人。」
「同感だな。」
再度、溜め息が重なる。
「ナマエ。おれはナマエにやってもらいたい。」
普段はあんななのに、急に真剣になるのは止めてほしい。
段々、彼のこの瞳に弱くなっている気がする。
「案は考えるし、用意は手伝う。でも私に制作は、できない。」
「どうしてだ?」
「これが、君のステージだから。」
「…………。」
「私が、やっていいものじゃないと思う。」
『王さま』が今まであがらなかった舞台に降り立つ。
そんな重大な舞台で、出しゃばっていいはずがない。
これで自分にその道の才があれば、少し思案はしたかもしれないけれど。
「そうだ。アレはおれの『Knights』に対する、おれのステージだ。だから、おれは、おまえに頼みたい。」
「ナルちゃんの方が、センスいいと思うの。」
「ダメだ。」
「どうして?」
「……。」
ここで黙るなんて、ずるい。
何も言えず、何も言われず、少しだけ冷えた風が吹き抜けてきた。
「月永。お前、嬢ちゃんに伝えてないのか。」
「……?」
「クロ。」
「……悪ぃ。」
なに?
あからさまに秘密抱えられて、ダメだばかり言われて。
「まだ、待ってなくちゃいけないんだ……。」
「ごめん。でも、おれのステージを何も聞かず見届けてほしい。」
「……。」
なんで、こんな不安な気持ちになるのだろう。
だって『王さま』の、リーダーの、彼の久々のステージなんでしょう?
どうしてこんなに、何かと戦うような表情を浮かべているの。