アイドル科の王さまと普通科の娘 | ナノ

アイドル科の王さまと普通科の

Act.22  スポットライトが秘密を隠す


彼のステージに、素人は要らない。


「なんでだ? 心配はいらないぞ、クロがいるからな!」
「他力本願か。」
「四字熟語いいな! ん? ……!」


あ、きたな。これは。


「も、もう少しで……そう、おれの世界が広がって妄想が宇宙へと届きそうだ!」
「……。」
「ん、んン……!」


…………。


「んぅう〜!」


…………。


「〜〜〜っダメだ! 途切れる!!」
「そうかよ。なら嬢ちゃんの話を聴いてやれ。」


この人いい人だ……。
凄い。こう言ってはなんだけれど、まともだ。


「よし分かった。で、何がどうなんだ?」
「聴いてなかったでしょ。」
「ああ!」
「ダメだこの人。」
「同感だな。」


再度、溜め息が重なる。


「ナマエ。おれはナマエにやってもらいたい。」


普段はあんななのに、急に真剣になるのは止めてほしい。
段々、彼のこの瞳に弱くなっている気がする。


「案は考えるし、用意は手伝う。でも私に制作は、できない。」
「どうしてだ?」
「これが、君のステージだから。」
「…………。」
「私が、やっていいものじゃないと思う。」


『王さま』が今まであがらなかった舞台に降り立つ。
そんな重大な舞台で、出しゃばっていいはずがない。
これで自分にその道の才があれば、少し思案はしたかもしれないけれど。


「そうだ。アレはおれの『Knights』に対する、おれのステージだ。だから、おれは、おまえに頼みたい。」
「ナルちゃんの方が、センスいいと思うの。」
「ダメだ。」
「どうして?」
「……。」


ここで黙るなんて、ずるい。
何も言えず、何も言われず、少しだけ冷えた風が吹き抜けてきた。


「月永。お前、嬢ちゃんに伝えてないのか。」
「……?」
「クロ。」
「……悪ぃ。」


なに?
あからさまに秘密抱えられて、ダメだばかり言われて。


「まだ、待ってなくちゃいけないんだ……。」
「ごめん。でも、おれのステージを何も聞かず見届けてほしい。」
「……。」


なんで、こんな不安な気持ちになるのだろう。
だって『王さま』の、リーダーの、彼の久々のステージなんでしょう?

どうしてこんなに、何かと戦うような表情を浮かべているの。





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