高い。赤い。厳つい。ちょっと怖い。
「…………どうも。」
どんな性格か分からないので、当たり障りなくだ。
「急に引っ張り出されたと思ったら、なんだ?」
「なんかすみません。」
「ナマエだ!」
「……。嬢ちゃんも苦労してんだな。」
「分かってもらえますか。」
にこにこと八重歯を見せながら微笑む彼を置いて、目の前の男生徒と苦笑する。
「んぁ? 何だ〜?」
「……はは、」
「はぁ。」
男生徒は寛容なのか、はたまた慣れているのかは分からない。
けれど、突然引き連れられても怒ることなく、眉を下げながらが笑ってくれた。
「にしても、あんたが噂のナマエか。」
「噂?」
「こいつが何度も何度も、うわ言のように口にしてるから有名だぞ。」
なんだそれは。
思わず睨みつけるように彼に視線を向けると、無邪気に笑われた。
「で。俺と彼女とを会わせてどうしたいんだ、月永。」
「ん〜っと、『おれ』のアクセントだ!」
「悪いが通訳頼む。」
「はい。」
きっとこの人も、彼には苦労しているんだろう。
軽くここまでの経緯を話す。
「それで、アクセントか……良く分かった。」
「察しが良くて助かります。」
もしかしてこの人は所謂『お母さん』タイプなのだろうか。
どちらにせよ、助かることこの上ない。
「できるか、クロ!」
「そりゃあ出来るけどよ。」
この人は……どういう人物なのだろうか?
『クマ』でないから凛月さんとやらではないのだと思われる。
しかし、そうなると『Knights』のメンバーではないのだろう。
それに、どうしてアクセントのことをこの人に?
「つまり、俺が衣装作りの時にそのアクセントをつけりゃいいんだろ?」
「えっ?」
「違う!」
「は?」
「えっ?」
ダメだ、どういうことだ。
「アクセントはクロじゃない、ナマエだ!」
「は!?」
「おいおい、無茶ぶりやしねぇか?」
「問題ない!」
「そりゃお前はな。」
……つまりだ。
聴くところによると、このクロさんとやらが衣装を製作している方なのか。
え、アイドル科の生徒じゃないの? という突っ込みは置いといて。
先程の彼の発言だと、まるで自分がアクセントそのもののようだから誤解招く。
やめてほしい。……って、そうじゃなくて。
「あーっと……つまり、あれか。」
この人も暫し考えていたのだろう。
懸命に思考を言葉にして紡ぐ。
「俺が衣装作りをして、それに合うようこの嬢ちゃんにアクセントを考えて作ってもらうってことか?」
「さすがクロ! その通りだっ。」
「何故。」
さも当然のように頷く彼に、微かな殺意が芽生える。
いや、いやいや。
「ちょっとさすがに厳しい。」