アイドル科の王さまと普通科の娘 | ナノ

アイドル科の王さまと普通科の

Act.20  誰よりも華やかを所望する


「何がいいかなぁ。う〜ん、今日は霊感が湧かないぞ?」


彼は依然、腕を組みながら上体を傾げている。 
この場で思い立ったわけではなく、どうやら元々悩んでいたようだ。
それなのに浮かばないというのは、中々珍しい。


「何かぱっと一目で分かるような……。」


一目で、か。


「衣装にアレンジ加えるとか。」
「お?」
「良く分からないけど、衣装って皆一緒なんでしょ?」


うん、本当に良く分からないけど。
テレビとかで見るアイドルグループの衣装はどれも一緒だ。
色が違ったり、デザインが多少異なったりしているが、ほぼ同じ原型のもと作られているのだろう。


「『王さま』だって分かるように、衣装にアクセント加えたらいいんじゃない?」
「……おおお!」


ド素人の案だけど。
そう付け加えると、急に彼は瞳を輝かせだした。
組んでいた腕が広がり、それがこちらに伸ばされる。


「さすがナマエ! それいいなっ! ありがとう、大好きだっ愛してる!!」
「……うん、そう、良かった。」


強く抱きしめられて、彼の大きな声とほんのり良い香が器官を刺激してきた。
びっくり、したぁ。


「何がいいかなっ。シンプルかつ邪魔にならないようなやつがいいな。ついでに不意をついてモーツァルトも跪き屈服するようなヤツ! ナマエ、何がいいと思う?」
「うん、とりあえず声量落としてほしい。」


耳元で紡がれる弾丸が強すぎる。
冷静に言葉を紡いだ自分を褒めたいくらいだ。
というか、偉大な音楽家に何を言っている。


「そして離れて。」


そう告げると彼は渋々といった様子で身を離してくれた。
温かかった体温がすうっと冷えていくのが、少しだけ寂しい。
けれど、自身の心臓のビートは最高値から脱却できた。

ああ……意外と、あったかい体温だった。


「で、何がいいと思う?」
「いつもの妄想はどうしたの。」
「どうにも今は食事中らしい!」


どういうことだ。


「そういうときもあるっ! だがおれは天才だからな、そんな中だって考え思案し思考回路を働かせるぞ☆」
「全部似たような言葉。」
「うっ、安易な言葉を使ってしまった……。今のでおれの中の世界国宝級のシナプスがやられてしまった!」
「はいはい。」


深刻そうに顔を顰めてはいるが、放置。


「で、アクセント。」
「ん!」
「衣装との相性で色とか、付ける部位とかあると思うから、一概にコレが良いとか言えないと思う。」
「そうか……うん、そうだなっ! よし、待ってろ!」


待ってろ……?


「ちょ、どこに……!」
「クロだ!!」
「は?」


……衣装の色が、黒ということ?





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