アイドル科の王さまと普通科の娘 | ナノ

アイドル科の王さまと普通科の

Act.17  人の陰に隠れた才ある者


週に1度は、どこかしらの『ユニット』がステージにあがるようになっていた。
今まではアイドル科だけで行われるような小さなステージも、普通科に公開されるようになったからだろう。

さまざまな演出、曲調を奏でるアイドルたちの姿は一層輝いていた。


「ね、今日もあるんだって。」
「最近凄いよねー!」


そう、最近は凄いのだ。


「昨日の泉さんかっこよかったよね〜!」
「分かる分かる! さっすがモデルって感じ。スレンダーだし羨ましぃ〜!」
「そんなこといったら2年の嵐くんだってキレイだよね。」
「トークも面白いし、やっぱり最高ー!」


『Knights』が、凄い。


「凛月くんって留学して2年なんでしょ? いーなぁ、私も留年してもう1年拝んじゃおっかなぁ♪」
「やっちゃう!?」
「司くんが卒業するまで私いる!!」
「いや無理だから。」
「でも、やれるならやっちゃいたい……。」


ここ連日、彼らのステージが多くなった。
そんなに頻繁にやるものなのだろうか、と疑問に思うほどだ。

というか、そんなにたくさんやってるなら一回くらいいいじゃない。
彼らの舞台に立つ姿を見たいのに、彼がそれを許してくれない。


「ね、知ってる?」
「なにが〜?」


教室の前方で語っている集団が、更に話を発展させる。


「『Knights』のリーダーが帰ってきたって噂!」
「、」


思わず反応してしまった。
何故、『噂』止まり?


「当然でしょ〜? なんでも『Knights』の曲って、全部彼が作ってるらしいよ。」
「まさに天才ってやつだよね。」
「だから新曲がたくさん聞けてるんだよねっ、どれも心に入ってくるから好きだなぁ。」
「分かる分かる!」


作詞作曲を手掛ける彼は、ド素人からしてみれば天才中の天才なのだ。


「でも、なんで毎回いないのかなぁ?」
「体調不良、とか?」


『いない』?


「ふと姿見えなくなって、せっかく帰ってきたと思ったのに……。」
「残念だよね〜月永くんって一年の時からずば抜けてたからさぁ。」


どういうことだろう。
『いない』って、まさか……。


「早く、ステージにあがってる姿見たいね。」
「ほんと。そしたらきっと、今の1,2年もメロメロだよね〜!」
「あ〜今日はいてくれますよーにっ!」
「アッ!? もう時間、行こっ!!」
「うわ、マジ!? やっば……!」


ドタドタと慌ただしい足音が次第に小さくなっていく。
ぽつんと教室の隅に残された自分は、唖然中だ。


「……ステージに、あがってない?」





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