週に1度は、どこかしらの『ユニット』がステージにあがるようになっていた。
今まではアイドル科だけで行われるような小さなステージも、普通科に公開されるようになったからだろう。
さまざまな演出、曲調を奏でるアイドルたちの姿は一層輝いていた。
「ね、今日もあるんだって。」
「最近凄いよねー!」
そう、最近は凄いのだ。
「昨日の泉さんかっこよかったよね〜!」
「分かる分かる! さっすがモデルって感じ。スレンダーだし羨ましぃ〜!」
「そんなこといったら2年の嵐くんだってキレイだよね。」
「トークも面白いし、やっぱり最高ー!」
『Knights』が、凄い。
「凛月くんって留学して2年なんでしょ? いーなぁ、私も留年してもう1年拝んじゃおっかなぁ♪」
「やっちゃう!?」
「司くんが卒業するまで私いる!!」
「いや無理だから。」
「でも、やれるならやっちゃいたい……。」
ここ連日、彼らのステージが多くなった。
そんなに頻繁にやるものなのだろうか、と疑問に思うほどだ。
というか、そんなにたくさんやってるなら一回くらいいいじゃない。
彼らの舞台に立つ姿を見たいのに、彼がそれを許してくれない。
「ね、知ってる?」
「なにが〜?」
教室の前方で語っている集団が、更に話を発展させる。
「『Knights』のリーダーが帰ってきたって噂!」
「、」
思わず反応してしまった。
何故、『噂』止まり?
「当然でしょ〜? なんでも『Knights』の曲って、全部彼が作ってるらしいよ。」
「まさに天才ってやつだよね。」
「だから新曲がたくさん聞けてるんだよねっ、どれも心に入ってくるから好きだなぁ。」
「分かる分かる!」
作詞作曲を手掛ける彼は、ド素人からしてみれば天才中の天才なのだ。
「でも、なんで毎回いないのかなぁ?」
「体調不良、とか?」
『いない』?
「ふと姿見えなくなって、せっかく帰ってきたと思ったのに……。」
「残念だよね〜月永くんって一年の時からずば抜けてたからさぁ。」
どういうことだろう。
『いない』って、まさか……。
「早く、ステージにあがってる姿見たいね。」
「ほんと。そしたらきっと、今の1,2年もメロメロだよね〜!」
「あ〜今日はいてくれますよーにっ!」
「アッ!? もう時間、行こっ!!」
「うわ、マジ!? やっば……!」
ドタドタと慌ただしい足音が次第に小さくなっていく。
ぽつんと教室の隅に残された自分は、唖然中だ。
「……ステージに、あがってない?」