アイドル科の王さまと普通科の娘 | ナノ

アイドル科の王さまと普通科の

Act.15  誰よりも遅く、誰よりも強い風が吹き込んだ


「う〜っ、酷いぞナマエ! おれを売りとばすなんてっ!」


還ってきた『王さま』はぷくりと頬を膨らませながら、可愛らしく牙を向けてきた。


「だって、ナルちゃんと約束したし。」
「おれよりナルなのか! いつの間にそんなに仲良くなったんだ!?」


これに回答はしない。
だって――


「待って! 考えさせて! おれから妄想という活力を奪わないで!」


ほうら。
こうなるのは、もう周知のとおりだ。


「それに自分の『ユニット』に顔出さないとダメじゃない。」
「あいつらがおれを探してるのは知ってたよ。転校生が一度顔出しに来たからな。」
「転校生……ああ、プロデュース科の。」


凄い。
彼を探し当てたのか、その女生徒さんは。


「けど、まだ弱い。」
「え?」


目の前の彼は先程までの表情が一変、心底つまらなそうに腕を組んだ。


「まっ暫く様子見〜♪ おれの『Knights』☆」
「あ、そう……。あんまり迷惑かけないようにね。」
「あいつらが迷惑かけてるんだぞ?」
「どこが。」


確かに個性的ではあるが、圧倒的に彼には劣る。
きっと、誰もがこれに同意してくれるだろう。


「ところでナマエ!」
「なに?」
「はら、へったな!」


ころりと表情が変わる彼は、実に懐かしい。


「うん。どっか、行こうか。」


ようやくここにも、変革の風がふき始めた。


「うどん! おでん!」
「なにそれ?」
「響きが似てるだろっ!」
「そうだねー。」


どこも似てないと思う。
ああ。この風は、酷く心地良い。


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<【開幕】第二幕 潤った世界で切れかけの電灯が耐える>




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