アイドル科の王さまと普通科の娘 | ナノ

アイドル科の王さまと普通科の

Act.11  光輝ある称号が陰を振興する


自分にとっての月永レオという存在がいかなるものか。
未だ、理解には達しきれない。

自分の処理能力が悪いとか、そういうのではなく。
彼の果てしなく広がる世界を私如きでは掴み切れないのだ。
それほど、彼にはまさに天才と呼ぶべき才が宿っている。

いつからか表出てくるものが変化こそしたが、その芯は揺らぐことはないのだろう。
今も、これからも。


「アタシね、『Knights』に入って『王さま』を知って……でもどういう人か理解する前に『王さま』はいなくなっちゃったの。」
「短時間で理解出来たら、ビックリだよ。」
「ふふ、そうみたい。泉ちゃんから聞いた言葉でも全然分からないもの。」
「でも、私はそれが魅力的だと思う。」


もっと早く出会えてたら、きっと面白い日々を謳歌出来ていたと思う。
彼が居ない長い期間の中で、もし彼が居たらと考えると、少し心が疼く。


「ナマエちゃんは『王さま』のことが好きなのね。」
「今までに見たことない人だから、刺激が強いのかも。」
「けどナマエちゃんにとってその刺激は『イイモノ』なんでしょ?」
「うん。」


決して、自分に害を与える刺激なんかじゃない。


「短い期間だったけど、その中でナマエちゃんの名前をたくさん聞いたのよ。それで、どんな子なのかって凄く気になってたの。」
「どうでしょう。」
「予想以上に素敵で可愛らしい子だわァ♪」
「それはありがたい。」


それにしても、そこまで彼は自分の名前を連呼していたのだろうか。
想像がつくような、……つかないような。


「実は、『王さま』と同じくちょっと変わった感性の持ち主なのかなって思ってたのよ。」
「何も間違えてないと思う。」
「そう思っちゃうわよねェ〜。」


お互いのパンケーキを交換して、ナイフをいれる。
なんかこっちの方が柔らかい気が……。


「私も、」
「ん? なぁに?」


しかも甘い。
ストロベリーだからかな。


「彼がリーダーを務める『ユニット』のメンバーは、変わった人なのかと思ってた。」
「あら。アタシ、変わってなァい?」
「ん〜、今まで傍にいたのがアレだしなぁ。」
「ふふっ。そうねェ。」


また、皿を戻して自分の分を食べると、酸味が強く感じられた。


「でもナマエちゃん、泉ちゃんにも会ったんでしょ? ちょっと取っ付きにくいって感じなかったのかしら。」
「苦労してるんだなって思った。」
「ウフフっ、なァにそれェ〜面白いわ♪」


くすくすと口元に手を当てながら彼は笑う。
はて、そこまで面白いと言われるような言葉を返していただろうか。


「今『Knights』って何人いるの?」
「3人よォ。アタシと泉ちゃんの他に、お眠りさんの凛月ちゃんがいるの♪」
「凛月……。」


その人物が、以前耳にした『くまくん』なのだろうか。
何も一致する要素がない……。


「凛月ちゃんもナマエちゃんのこと少し気になってるみたいだけど、それよりやっぱりお休みしたいみたいよォ。」
「惰眠?」
「彼からしたらそうじゃないのよ♪」
「へぇ。」


ナマケモノよりは寝ないだろうし、きっと睡眠を愛しているのだろう。
そういうことにしておこう。


「でもナマエちゃん、アタシたちのこと本当に知らないのねェ。」
「あ、ごめん。」
「ううん、いいのよォ♪ ただ『王さま』は何も喋ってなかったと思うと、ちょっと意外だったの。」
「そんなに?」
「ええ。今までにも一応ライブとかもあったし……まあ、ちょっとやらかしてもきたしね。多少なりとも、『王さま』って今の状態話しているのかと思ってたわ。」
「……?」


なんとなく、彼の表情や声色から現在、あまりいい状況下にいないようだ。
それこそ以前聞いた『自由になったら』という言葉が頭の中でリフレインした。


「やっぱり、『皇帝』を降ろしてから見せたかったのかしら?」
「『皇帝』……?」
「あっ、なんでもないのよ。気にしないでちょうだい♪」
「うん……。」


単語だけなら、聞いたことがある。
アイドル科に君臨している『皇帝』――権力も実力も兼ね備えたまさに呼び名の通りの人物。

なにやらアイドル科は不穏な雲行きの中で輝こうとしているらしい。


「ナルちゃん、もう一口ちょうだい。」
「あら、どうぞっ♪」


彼が戻ってこないのは、そこに原因があるのだろうか。





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