唇から伝染する
「…まさかー…ねぇ」
「ぬー、ごめんな、」
「いや?私は大丈夫。辛くない?」
「ぬんー…」
今日は翼の誕生日である2月3日。
…この時期って丁度インフルエンザとか風邪が流行る時期なんだよね。
残念ながら今年の翼の誕生日は寝込んで終わってしまうようだ。
「んー、熱下がらないね。誕生日プレゼント、セーターにして良かった」
「ぬー、ありがとなー」
「いえいえ、病人は休んでなさいな」
彼の熱をもったおでこのひえぴたを張り替える。
「大丈夫?冷たい?」
「んっ…ぬはは、ありがと!」
「よし、早く治るといいねー」
横になっている翼の髪を掬って愛おしげに見つめてみる。
すると翼はこっちを見てもう一度「ごめんね、」と呟いた。
「何で謝るの…」
そう言って苦笑いすると
「だって折角誕生日プレゼントまで買ってきてくれたのに俺の看病だけになっちゃいそうだから…」
と悲しげに言った。
「そんなの気にしないで、元気になってからまたたくさん話そう?」
そう言うと「ぬいぬいさー!」といつもの元気な返事が返ってきた。
そんな彼が愛おしくて、たまらなくなって
少しだけ口づけると「風邪、うつっちゃうよ?」って笑って、
「うつして翼が楽になるならうつしてほしいもん、」なんて我が儘を言うと
もう一度、甘い口づけが降ってきた。
<唇から伝染する>
(風邪?)
(いや恋の病かな、)
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