02
(今、お母さん、何て言った?)
「意味わかんないし、え、冗談でしょ…?」
「嘘なんかつくはずないでしょ? で、悪いんだけど雨竜くんと由佳には別れてもらうから」
そこで、思考回路がショートした。別れるって、何、え、
「だって、あんたたち兄妹になっちゃうのよ?」
「…っ、何よそれ、なんで急にそんなことになってんの!? 意味わかんない、」
雨竜に会って、話がしたい。
お母さんの声なんてもう聞こえてなくて、私は家を飛び出して、雨竜の家に向かった。
震える指でインターホンを押す。直ぐに雨竜は出てきてくれたけど、私の口から上手く言葉は出てきてくれなかった。
「…由佳? どうかしたのかい、僕が君の家にいくはずじゃ」
「ちがう…」
「…は? ちがうって… 意味がわからない」
「…違うって言ってんじゃん」
聞いてよ。早くしないと私達、別れなきゃいけなくなるんだよ?
「じゃあ何」
「…別れろって言われた」
「…はあ? 誰に」
「お母さんに」
そういうと、呆れた顔で思いっきり溜め息をつかれた。なんだか泣きたくなって、俯いたけど私の涙は止まってはくれなかった。だけど、それに気づかずにいるらしい雨竜に少しだけ感謝した。
「だから、意味がわからない。そんなわけないだろ」
でもさ、こういう言い方はないと思う。私は、本当に本気で言っているのに、どうしてこういう言われ方をしなくちゃ行けないんだろう。
「本当だってば!!」
だからだ。ついむきになってしまって、見せたくはなかった涙を見せるようにバッと顔をあげてしまった。ぼやけた視界には驚いた顔をした雨竜の顔があって、やってしまった。そう思った。直ぐにまた下を向いたけど、もう遅かった。
「まさか、本当に、」
雨竜の声が、さっきの呆れたような声から少し焦ったような真剣なような、そんな声になったのがわかった。
「何があったのかしらないけど、どうしていきなりそんなことを言われたんだ?」
「お母さんと、雨竜のお父さんが、再婚するんだって」
「…それで別れろって言ったんだね?」
話しているうちにまたどうしようもない不安感に襲われた。やだ、やだ、それしか考えられなかった。
「どうしよう雨竜、嫌だよ別れるのなんて、どんなことがあったって嫌だ」
また堪えきれなかった涙が拭っても拭っても溢れていく。どうしよう、雨竜にこんな弱いところ見られたくなんてなかったのに、止められない。そこでいきなり腕を引っ張られて、抱き締められた。
「…え、雨竜、」「大丈夫だから」
「え、」
「絶対、別れなくてもいい方法を見つけるから」
「…うん」
もう、自分を信じるしかないんだ。
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