彼女が心配

※色々無理矢理設定/格好いい降谷君はいません/都合のいい設定/大丈夫の方のみスクロールお願いします





「赤井さん!お世話になります〜!」
「ああ、嬢ちゃんか。今日も宜しく頼む」
「はあい!」

ぺこりとお辞儀をする時雨に目を細める赤井。 そんなやり取りを端から見ていた降谷は、彼とは違う意味で目を細めた。

「降谷さん、顔、凄いですよ」
「...ああ、すまん」
「それで、事情聴取の件ですがーーー」


読唇術で会話を読みなから、書類について説明する風見の声を聞く。 我ながら器用だなものだ。
FBIと公安の合同捜査が始まってからはや数日。 時雨はFBIの話を聴けることが相当嬉しい様で、公安そっちのけでFBIに引っ付いていた。
小説家としての仕事だろうがなんだろうが、よりによってFBIに熱をあげる彼女を傍らに仕事をするなんて。

「(赤井秀一め...)」

降谷は、可憐な彼女の隣の男をギラりと、私怨の籠った睨みを飛ばした。 それは彼相手には全く通用せず、睨みに気づいた例のFBIは、ニヤリと口を歪ませてみせる。

「おっと。 そこはちょっとした段差になっているんだ」
「わ! ありがとうございます…」
「段差や坂が多くて歩き辛いだろう」
「いえ! 歩きやすい靴で来たので余裕です!」

仲睦まじく施設を案内する赤井に、時雨は手を引かれるように段差を降った。
勿論、それは赤井が突然に、それも自然に手を取った結果で、時雨はほぼ強制的にーーー、その手を取る事になったのは、降谷の目から見ても明らかだった、が。
当然自分の彼女が他の男に言い寄られている図に、降谷はピキピキとこめかみが動くのを感じた。


「……降谷さん、」
「風見、大丈夫、解ってる。 何も言うな」
「はい」

ここは職場だ。 私情を持ち込んで取り乱すなど言語道断である、と拳を固く握る。 時雨は暫くFBIの元で仕事をするらしい。 公安とFBIの合同調査とはいえ、四六時中同じ場所にいる訳では無い。 自分がいない間も、彼女は赤井と仲睦まじくーーー密接してーーー過ごすのだろうか。

「(…時雨も仕事で来てるんだ、遊びじゃない)」

仕事のためだ、仕方がない。自分だってバーボンの時は、女性に対してハニートラップをけしかける事もある。



………彼女はーーー時雨は、隙が多い節がある。 彼女の厚意を好意と思い違いをする輩は多いし、庇護欲を唆る外見は、無条件に男心を擽るらしい。 時雨が困った風にすれば、周囲の人間は放っておかないし、純粋に感謝を伝えてくれる時雨に好意を抱く輩は少なくない。 それは彼女の魅力で、なにより天然の産物である。
だからこそ、自分の目の届かない時雨が心配でたまらない、と降谷は数秒の間思慮を巡らせた。

思考を風見の持つ資料へ戻す。 そう、彼女は仕事で来ているだけ。 赤井とは仕事上関わるだけ。 仕方がない事なんだ。 別に彼女だって望んで赤井といる訳では無いし。降谷は無理矢理心を納得させて、捜査資料を頭に入れた。





「ーーーという事です。 今日は調書を纏めて、次に警備を強化する箇所を絞ります」
「ああ解った。 午後から現地で現状調査をしよう」
「伝えておきます!」

パタパタと部下の待つ部屋へ駆けていく風見を見送り、それに続こうと踵を持ち上げる。 癖のように、視界端へ彼女を入れると、赤井と捜査官1人の後に続いて扉の中へ入っていくところだった。



パタリと閉じられた扉を見つめて、降谷は息を止める。
あそこは資料室だ。 ごちゃごちゃ物が散らばっていて足元も悪いし、それに狭い密室ーーー、



「……………」

ずかずかと大きな歩幅で資料室前へ向かうと、降谷はその扉を勢いよく開けた。

「奇遇だな、俺も丁度調べたい事があった。 悪いが半分使わせてもらう」
「降谷君」
「零! 公安も調べ物?」
「ああ。気にせず続けてくれ」

調べ物があるのは嘘だが、為になる資料があるのは事実。態とらしく時雨の横でファイルを開き、降谷はペラペラと捲った。

彼女を1番放って置けないのは俺だ。 いつまで経っても彼女離れできないな、と自嘲気味な笑みを浮かべる。

それから少しして、資料室での用事を済ませた各々は、廊下に続く扉へ足を向ける。降谷は、FBIに続く時雨の腕を引くと、こっそりアプリコット色の唇に口付けをした。
頬を染めながら「仕事中だよ」と怒る彼女を見送り、どうにかそれを源力に、脳内を仕事に全集中させた。






ーーーーーーーーーーー………


「なんで? どうしてこうなるの?ここはーーー」
「あ、ハイ、この時はまだ供述がーーー」


「...君達、近すぎないか?」
「す、すみません!」
「ごめんね風見さん、つい夢中になっちゃって」
「風見」
「零、説明を頼んだのは私だから…」
「次からは俺が説明する」
「零はやる事あるじゃん」
「俺が説明する」
「零!」



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