洗脳<おれ
P5Tねた

P5Tマリエキングダム洗脳ネタ
以降と以前のネタバレは含まれてませんが、ガッツリマリエの描写があります。未プレイの人や少しでもネタバレ踏みたくない人は注意してください。。。


ふんわり事前解説

ルブランで過ごしていた怪盗団は、不思議な空間へ飛ばされてしまう。そこには日常と変わらないルブランがあり、しかし外は非日常であった。パレスとは似て非なる不思議な空間の主、《マリエ》 の支配から脱却すべく奮闘する《エル》と、謎の男《春日部統志郎》と出会う怪盗団。 元の世界へ帰る手がかりを模索する中、《マリエ》の洗脳によってジョーカー以外の怪盗団が散り散りになってしまう。




ーーー


厄介な洗脳を受けていた怪盗団の面々を順調に取り戻し、洗脳が解けた祐介と真がルブランで目を覚ました頃。
洗脳されてしまった仲間はあと1人となったが、いくら偵察へ行っても彼女の動向だけは全くと言っていいほど掴めず、とうとうマリエとの決戦も近づいてきてしまった。

怪盗団のリーダーとしても、勿論それを抜きとして恋人としても心配で仕方がない雨宮蓮は、落ち着かない様子でルブランの扉を眺めている…とその時、店内を見回した祐介が不思議そうに首を捻った。

「そういえば、夢乃は…」
「あ、」

1番に口を開けたのはモルガナだった。その瞬間、異世界ルブランにピリピリとした空気が流れる。まだ何も知らない真ですらその空気で察したのか静かに顔を伏せ、杏は心の底から「しまった」と声を絞り出した。

「…夢乃は…まだ見つかって………うう」
「おお蓮よ、死んでしまうとは情けないぞー!」
「あー…相当参ってんなー」


ぺしょりとカウンターテーブルに潰れてしまった蓮をぺちぺち叩くと、竜司が「ずっとこんな感じ」と手を広げて見せた。蓮の下敷きになったモルガナがギュウと鳴く。

「そうだったのか…すまない。俺は不用心な発言をしてしまった様だな」
「いーのいーの、姿が見えなきゃ心配にもなるっしょ」
「ああ。俺達と同じ様に洗脳下にある以上、早急に目を覚まさせなくては…何が起きるか知れたものでは無いからな…」
「き、君…あまり不安を煽るような発言をすると…」
「夢乃…! やっぱりもう一度捜索に…っ!」
「あーっと!待て待てーっ!逃げ出すなコラーッ!」

統志郎の不安げな声が終わるより早くに椅子から降りた蓮の裾を、慌てて双葉が掴んだ。同時に焦燥した彼の肩を真がやさしくカウンターテーブルまで押し返す。

半ば夢乃に依存している蓮を知っている怪盗団は、恋人の行方不明に加えて敵の洗脳下というこの状況に絶望を感じていた。 怪盗団の一員としての心配と恐怖は勿論の事だが、1番恐れているのはリーダーである蓮の精神状態である。 戦場では支障をきたさないよう意識しているのだろう、いつも通りの連携に問題は無い…のだが。ジョーカーとしても蓮としても、精神的な限界が近づいているのは明らかだった。

「せめて何処で何しているのか分かればいいんだけど、夢乃に関しては全く情報がないんだよね」

杏の言う通り、各所に散らばった改革軍さえ彼女を見ていないと言うのである。

「酷い目にあってなければいいんだけど…」
「夢乃に会いたい…」
「絶対大丈夫!次こそ夢乃ちゃんの手がかり見つかるよ!」
「俺も偵察に」
「いやお前は目立つからダメだって」

ぴしゃりと竜司が言い放つ。この男、何度も目立つからと偵察を却下されているのにめげないのである。

「どうして。俺なら見つけられる気がする」
「もう…。見つける前に見つかって騒ぎになるでしょ?」
「もう1回作戦会議だなー。流石に夢乃が見つからないと困るし…取り敢えず偵察中の革命兵が戻ってくるのを待つしかない」
「………こらそこ。脱走しようとするな」

杏にがしりと掴まれた蓮は渋々席に腰を下ろした。


…。

そんな時、広場の方へ調査へ行っていた伝達兵がルブランのドアベルを大きく鳴らす。

「報告であります! 皆様のお仲間と思われる少女が1人、広場を歩いているという情報が…」
「行くぞ!」

言い終わる前にジョーカーは伝達兵の横をすり抜けてドアに手をかけた。

「ま、待て!なにかの罠かも…」
「悠長な事は言ってられないぞ。この機を逃せばまた夢乃を見失うやもしれん」
「それは…」

伸ばした手を気にも止めずに後へ続いた祐介に、統志郎はおずおずと手を引っこめる。が、その手を寸のところで双葉が引っ張った。

「よし!いくぞー!お姫様救出大作戦だっ!」



ーーー



「おーほっほっほ! のこのこと懲りない連中ねえ」
「夢乃っ!」
「頭の悪い……って、何してくれてんのよッ!は、離れなさいッ!」
「夢乃だ…!」

不足すぎてガワだけで満足してるぞ、とナビが面白そうに肩を揺らした。 アイマスクベールに大きなピンクのキスマークを付けた夢乃、もといコードネームはジョーカーの手を振りほどこうと激しく身じろぐ…も、そのホールドから逃れる事が出来ずに思わず体制を崩す。
元々大胆なデザインの怪盗服を身に纏う夢乃を、不意ながら押し倒す形になってしまったジョーカーは、その温もりと柔らかな肢体にゴクリと喉を鳴らした。艶やかに光る太腿、滑るような肌触りの二の腕、見えそうで見えない………

「───ッペルソ」
「夢乃」
「ッ!!」

ペルソナを召喚しようとした夢乃の口を手で覆いながら、ジョーカーは彼女の瞳をのぞき込む。 吸い込まれそうなあのブラウンの輝きは、洗脳によってすっかり失われてしまっていた。

「ジョーカー離れて! 夢乃ちゃんは夢乃ちゃんでも夢乃ちゃんじゃないんだから!」
「の、ノワール?ちょっと何言って…」
「ジョーカーが会いたかったのは、中身も全部本物の夢乃ちゃんでしょ?」
「………ありがとう、悪いな…目が覚めた」

ペチンとジョーカーは己の両頬を叩く。 組み敷いていた夢乃の身体を起こそうと手を回すが、夢乃はピシャリとその手を払って後ろに飛び退いた。 すぐ後ろでスカルが「そりゃそうなるだろ、普通」とボヤく。今の夢乃は意識も身体も全てマリエの支配下にあるのだ、安直に敵の手を借りるわけが無いだろうに…とクイーンがやれやれと首を振った。

「っふ、ふふ…アーッハッハッハ!! なんて都合がいいのかしら!リーダーの貴方が取り乱すくらいに大切な子なのねぇ!? うふふ…!そんな大切な子に傷を付けられるのかしら!?ねェ!?」

散乱した木箱を力任せに踏み抜いて、夢乃が高らかに笑い声をあげる。

「愚図は惨めに一方的に嬲られるがいいわッ!!」

突き出したロッドの先、チリリとチェーンが揺れる。 銀製の鎖鎌を振り被ろうとした夢乃より速く、ジョーカーは地面を蹴った。

「悪いな」

ばさりとと黒いコートが靡く。

「夢乃の弱点なら知り尽くしてる」

ふわりと風に揺れる髪の毛から覗くうなじをひと撫ですると、ピクリと夢乃の身体が跳ねた。 そのまま大きく開かれたデコルテへジョーカーが手のひらが伸びる。 惜しげも無く晒された鎖骨を手が這うと、夢乃の身体は膝から崩れ落ちた。 怒りを顕にする態度とは裏腹に、華奢な身体はぷるぷると震えてしまってすっかり闘志を捨ててしまっている。

「貴様ぁッ!なにをした!? ぐ…ッ 身体が言うことを聞かない…ッ!!こんなこと!!あるはず…ッ!!」
「お前の洗脳より俺の方が強い」
「クソッ!!」

崩れ落ちて震える夢乃から発せられる怒声に先程までのような威圧は無く、そんな様子を見ていた統志郎はトントンとスカルの背中を小突いた。

「な、なんだかハレンチじゃないか?」
「そういう目で夢乃を見ると斬られっぞ、ジョーカーに」
「斬られるのか!?」
「そうそう。ハレンチな目で見たフォックスは現に何度か斬られてるからねー」
「誤解だぞパンサー。俺は悪魔で芸術としてだな…」
「あーはいはい」


「いい加減、夢乃を返してもらおうか」

ドンドン、と鈍い音が数回響いて、各々はそれがジョーカーの発砲音だと気づくのに数秒かかった。 それくらい不意の先制攻撃だったのだ。味方ですら反応が遅れるその行動にマリエ軍は対応すら取ることが出来ず、次々とダウンしていき、早々に怪しい光を放つ旗へ辿り着いたジョーカーは、凛々しい声で「終わりだ」と告げた。

「流石…としか言いようがないわね…」
「終わったな」

「俺ら要らなかったんじゃねーの?」とボヤくスカルに、モナが「何言ってんだ、仕事はこれからだろうが」と2人に歩みよる。

「うっ…ジョーカー…?あれ、わたし…」
「夢乃ッ!」
「うぐっ」

ぎゅうと羽交い締めにされた夢乃は、視界いっぱいに入り込む黒の外、可愛らしい猫…もといモナを見つけて「たすけて、」と声を絞り出した。

「おいおいジョーカー、ユメノは洗脳が溶けたばっかりなんだぜ。あまり無理させちゃダメだろう」
「無理」
「フォックス」
「相分かった」
「や、やめろ!運ぶな!俺を!」
「よしオマエら、ルブランへ戻るぞ! ユメノを休ませてから作戦会議だ!」
「続きはアジトで体を休めてからしてねー」

ズルズルとフォックスに運ばれていくジョーカーを眺めながら、やっと解放された夢乃はゆらりと立ち上がる。隣でクイーンが肩を貸してやると、「ありがとう」とアイマスクベールが揺れた。

「ううん、夢乃が無事で本当に良かったわ。大丈夫?身体、痛いところとか無い?」
「大丈夫だけど、少し頭がクラクラするかな…」
「強力な洗脳を受けてたんだもん。一旦ルブランに戻ってゆっくり休もう?」
「ありがとう。ごめんね、迷惑かけちゃって…」
「全然迷惑とかそんなのないから!寧ろ夢乃の有難みを感じたというか、なんというか」

申し訳なさそうに目を伏せる夢乃に、クイーンとノワールは当時の雨宮蓮を振り返る。 2人に支えられながらルブランへの道を辿っていると、周囲の状況を確認して戻ってきたナビがにししと笑った。

「湿りきってたからなー、リーダーが」
「蓮くんが?」
「湿ってたなんてモンじゃないわよあれ」
「なんていうか…びしょびしょ?」
「びしょ………とにかく、蓮くんの様子が大変だったのはすごく伝わる…」
「んーっまあでも、本当に無事で良かったぞー!これで怪盗団全員集合!だな!」
「ふふ、そうね。 これから忙しくなるわよ!ああでも夢乃はしっかり休んでね?まだ無理しちゃダメよ」




「…あのー」

和気藹々と過ぎ去っていく4人の背を眺めて列の殿を歩くエルは、同じく後ろを守るパンサーにおずおずと声をかける。

「エル、いいの。大丈夫。そのうち自然と受け入れられるようになるから」
「…そう?ま、ジョーカーも嬉しそうだしいっか!」
「じ、順応力がすごすぎるな君は!!」


マリエ決戦まであと数時間───…。


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