自由時間 門限9時
※P5S時間軸
※相変わらず格好いいリーダーは居ません






「あー…」
「? アン殿、どうかしたのか?」
「んー、最近蓮 なんか落ち着きなくない?」
「そうか? …まあ確かに、そう言われるとちょっと余裕無さそうな態度が目立つな」

「おいおい。そりゃそーだろ」
「おっ、リュウジ」
「理由心当たりあんの?」
「まあなー。 多分充電不足なんだろ、夢乃不足」
「あっ…あー」
「ここんとこ忙しかったせいで全然夢乃と一緒に居られてない〜とかで気ぃ落としてんだろ、きっと」
「やだ…うちのリーダー可愛すぎ…」
「しょうがないリーダーだな…。よしっ! ワガハイが一肌脱いでやるか!」
「脱ぐモンねーじゃんっ!」
「う、うるせー!!」

「あれ、みんなこんな所にいたんだ。何騒いでるの? 喧嘩?」
「おっ夢乃!いい所に〜! 今ヒマ?ヒマだよねっ?」
「うん、暇だけど…ってなにその笑顔…?」
「えっへへ〜…ナイショ!」
「ユメノ! リーダーが呼んでたぜ!大至急だーって探してたぞ!」
「えっほんとに? 教えてくれてありがとうモルガナ!」
「うっ…眩しすぎる笑顔…胸が痛いぜ…」
「何か言った?」
「や、なんでもない」
「蓮ならさっき大通りで見かけたからまだいると思う!気をつけて行っておいで〜」
「ありがとう杏ちゃん。…随分楽しそうだね…?」
「うん!メチャクチャ楽しいもん〜…あとでチャット送るねっ!」
「うん………?」


…。

「あ、いたいた蓮くん!」
「…夢乃?」
「ごめんね探させちゃって…。ちょっと露店で買い物してたんだ」
「欲しいものは買えた?」
「うん、ばっちり!」
「よかったな」
「モルガナから聞いたけど、緊急の用事ってどうかしたの?」
「え?」
「え?」
「モルガナ…?夢乃が俺に会いにきてくれたのは凄く嬉しすぎるんだけど、緊急の用事に関しては………あ、竜司からチャットだ」
「なんて?」
「………今日一日自由時間、だって」
「自由時間?」
「あー………多分俺に気使ったんだと思う、巻き込んでごめん…」
「全然いいけど…蓮、どうかしたの?」
「ん」

きゅっと小さな手を握ると、夢乃はぱちぱちと大きく瞬きをした。

「な、なに…」

そう言いながら少しずつ頬を紅潮させる彼女に胸がドキドキ高鳴る。
するりと指を絡めると、ピクリと肩をゆらした夢乃がふいと顔を地に下ろした。

「手、繋いだままでいい?」
「え、えっと、うん」
「夢乃と少し散歩がしたいな。商店街に美味しそうなスイーツを見つけたんだ…夢乃が好きそうなやつ」
「本当?行きたい!」
「よかった。じゃ、行こうか」
「うん、ありがとう」

パッと花のような笑顔で顔を上げる夢乃が可愛くて、思わず頬が緩む。
キャンピングカーで各地を旅する中で知った彼女の一面。意外とコッテリした食べ物が好きで、気に入った食べ物は連日食べても平気なこと。スイーツは甘すぎるものより控えめに甘くてさっぱりしたものが好きということ。
愛らしい一面を知るたびに、夢乃のことが大好きという割にはまだまだ知らない事だらけだなあとヒシヒシ感じた。

毎日一緒に過ごせることは幸福なことである。
…だけど同時に、足りなくなる。視界に入る愛らしい姿と脳に記録されていく情報に比例せず、旅の中では夢乃に触れる機会が殆どない。
知れば知るほど好きになるのに、禁欲を強いられるこの旅に精神がやられかけていたのも事実。 それをモルガナ達に見抜かれてしまうなんて、怪盗団のリーダーが情けないな、と心の中で自嘲した。


…。


幸い待つことなく席へ通されたスイーツ店には、俺のリサーチ通り夢乃の口に合うケーキやお茶菓子が揃っていたようで、隣の席に座った彼女はそれは大層満足気な顔で頬張っていた。可愛かったから、こっそり写真を撮って待受にして置いた。
店を出る頃には少し日が落ちかけていて、夢乃と2人きりで居られる自由時間も終わりなのかと寂しくなる。
昼時とは違った雰囲気の大通りを歩きながら、たわいの無い話でもりあがった。 ぎゅうと握った手が愛おしくなって、形を確かめるように何度も握りしめると、夢乃はくすくす笑いながらこちらをのぞき込む。

「それで? 蓮くん、本当はなにがあったの?」
「………最近みんなと一緒だったからさ、俺といるより真や杏と過ごす時間が多かっただろ?」
「そうだね。ジェイル攻略でバタバタしてたから」
「実は、少し寂しかった」
「…少しだけ?」

そう悪戯に口角を上げる夢乃がとても魅力的で、思わず指に力が入る。少しの時間見とれていると、「ん?」と夢乃が小首を傾げた。かわいい。

「嘘。すごく寂しかったしちょっとヤキモキしてた」
「ちょっとだけなの?」
「…いっぱいしたけど」

「へえ。すごく寂しくていっぱいヤキモキしてたんだ」
「…女々しいだろ。笑いたきゃ笑ってくれ」
「なんで?全然そんなことおもわないよ?…私も一緒だし…」
「夢乃も寂しかったってこと?」
「うん。…だってずっと一緒にいるのに、あんまりキスとか出来ないし…そりゃ…」
「かわいい。おれ、夢乃のこと大好き」
「や、やめてよ…声大きいよ人いるんだから…」
「キスしたい」
「…ちょっと…指、なんかやらしいからやめて…」
「やだ」
「蓮くん、ほんとに…う、」

夢乃とは情事の時に手を繋ぐことが多い。指を絡めて指の間をすりすりと刺激したり、指の腹で優しく華奢な指を撫でたり、余すことなく夢乃を愛したいおれなりの愛情表現だ。 その行為は別段情事に耽っているときに制限されず、手を繋げばいつだってすることが出来る。 …勿論弊害はある。夢乃の身がぴくりと跳ねるように、俺だってそういうことを思い出して体が火照る。

「…ごめん。調子乗った」
「う、ううん…大丈夫。な、何ともないし…」
「うそ、顔赤いよ」
「いじわる」

歯止めが効かなくなってしまう。慌てて手の動きを止めると、タイミングを狙ったかのように竜司から着信が入った。 悪い、許せ竜司。大切な夢乃との時間を邪魔させる訳にはいかない。 無視を決めた俺だったが、夢乃が「緊急かもしれないから出て!」と急かすので仕方なく応答した。

『あー…怒んなよ、邪魔するつもりはねーからさ!』
「べつに怒ってない。何かあったのか?」
『いや。伝え忘れてたなーと思って! お前ら門限9時なっ!こっちは適当に飯食っとくからよー』
「え?」
『リーダーにしょげた顔されてっとこっちも士気が下がるからなー。ま、2人きりの時間満喫してこいよ。じゃあな!』
「まて竜司………切れた」

ツーツーと無機質な機械音を聞きていると、隣から心配そうに夢乃がこちらを見た。

「竜司くんなんて言ってた?緊急だった?」
「いや…門限は9時だって」
「9時………?」

頭にはてなを浮かべる夢乃の手をとってぎゅうと握りしめる。

「こういうこと」
「え?どういう…?まって、こっちはキャンピングカーとは逆…っ」
「まだ返すつもりは無い」
「れ、蓮くん!」

手を引いて細い通りを進んでいく。ここだけの話、欲求不満の窮地に陥った俺は密かに近辺のラブホテルを検索して、キャンピングカーからのルートを把握していた。なぜならば、予期せぬ空き時間ができた時にロスタイムなくエスコートする為である。…まさに、今日の時のような。

建物に着いて、夢乃の第一声は「ラーメンじゃない…!」だった。どうやらおれが穴場のラーメン店へ案内していると思っていたらしい。そこもかわいいが。

「ラーメンが良かった?」
「そ、そんな事ないけど!? 何も言わないで連れてくるからてっきり…!」

恥ずかしそうに慌てる夢乃の耳にキスをする。この通りならべつに恥ずかしい場所でもないだろう。

「は、恥ずかしいこと言ってもいい?」
「うん?」
「…はやく、蓮くんとたくさんキスしたいな…なんて…」
「待って。今から煽られるとおれ、本当に何しでかすか分からないから…」
「………いいよ、蓮くんの好きにして。今日は私も久しぶりだから…なんかもうおかしいし…」

言いながら黙りこくってしまった耳まで赤い彼女の手を引いて受付をさっさと済ます。 受け取ったキーの部屋に入ると、鍵を締めながらその場で唇をかさねた。
息付く暇も無いくらいにキスをして、ぎゅうと夢乃を抱きしめる。柔軟剤の香りと、少し汗ばんだ夢乃の甘い香りが鼻腔に充満して胸も身体も苦しくなる。
好き、好きだ。好きでたまらない。

するりと腰からヒップにかけての魅惑的な曲線を撫でれば、夢乃は甘い声を上げて身を捩った。 それを逃がすまいと捕まえてまたキスをする。次第に自立する力も抜けて、全体重をこちらへ預ける夢乃を抱き抱えると、部屋の中央にある大きなベッドへそっと縫いつけた。

蒸気した頬と乱れた衣服はどうしても性的で、ここ最近禁欲を強いられてきたおれにはたまらなく毒だった。
まるだしの首筋に噛み付いて、俺の印を残していく。冬場に比べて夏場の夢乃は不用心な格好をしてるから、毎回こうしておれがキスマークをつけて牽制している。キスマークがあれば、夢乃はそれを隠すために肌の見えない服を選ぶ。夢乃の肌を見れるのは俺だけでいいし。

「れ、蓮くん…」

だいすきだよ、と呟く愛らしい唇を塞ぐ。
夢乃のことなら一日中だって愛撫していられる。むしろ24時間じゃ足りないくらいだ。
だけどこうして皆が作り出してくれた俺と夢乃の時間は、有限だからこその熱がある。

「…いまだけ、夢乃を独り占めさせて?」
「わ、たしも…蓮くんでいっぱいにして…?」
「こら…かわいすぎること言って煽るな。どうなっても知らないからな…」
「蓮くんになら、どうされてもいいよ…」

本当に?そう聞けば、夢乃はいつもより数倍悪戯に見える笑顔で「うん」と答えた。





………。



「…夢乃は?」

祐介が車内を一周見回して問うと、双葉がカタカタキーボードを叩きながら自身の横を一瞥した。

「死んでる、死因はリーダー」
「蓮が? 大丈夫なのか夢乃は」
「だいじょぶ…ゆうすけありがと…」
「揉むか?」
「祐介、俺の彼女に堂々とセクハラしないで」
「セクハラでは無いが」
「おイナリは言葉が足りてないことに気づけー」


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