色欲
「わーっ! コードネームが色欲状態だぞ! 誰か回復してやれっ」
「コードネームっ、ごめんなさい、SPが足りないわ!」
「ぐッ…わりい! 余裕ねえ!!」
「交代だコードネーム、俺が前に出る! 介抱を頼んだぞジョーカー!」
「ああ、前線は頼んだ!」

フォックスと前線を交代したコードネームを、ジョーカーの手が引く。 フラフラと手を引かれるがままに物陰へ座り込むと、コードネームはジョーカーの手を握り返した。

「大丈夫か!?」
「…ッ、は、はあ……ジョーカー……」
「今回復アイテムを───」
「じょーかあ…」
「っちょっと、コードネーム、それはマズイ…」
「うん、うん…はあ、ねえもう、ダメ…ん、」
「んッ………。 、待て待て、本当に待ってくれ」

両手で力任せに頬を引き寄せて唇へ吸い付くコードネームを、ジョーカーは断腸の思いで引き離す。
…この愛おしい彼女は、色欲状態になると毎回こうなるのか? それはそれでまずくないか、とジョーカーは別の意味でも顔を顰めた。

「なんでぇ? だめなの? じょーかあっ」
「クソ…こんな状況じゃなかったらなぁ…!」
「ふ、ふふ… 身体は正直なのにね…?」
「うあ…っ」

スラリと伸びたヒールの先がジョーカーの局所をツンツンとつついた。 びくりと身体を跳ねさせる彼を見て、コードネームはぺろりと下唇を舐める。 膝上のスカートをユラユラと厭らしく擦り上げて、甘美な曲線を描く太腿が露になる。 ゴクリとジョーカーが唾を飲むと、その一瞬の隙をついてコードネームは彼を押し倒した。

「…ッ、コードネーム、ダメだ!」
「だめじゃないくせに、うそつき」
「んッ……はあ、…っ」

ジョーカーの両手を地面に縫いつけ、ちゅっちゅと啄むようなキスを繰り返すコードネーム。 それは次第に可愛げのあるキスから深いものへ変わっていき、唇を食んでみたり、舐めてみたり、舌を吸ってみたりと、甘美なものへ行き着いた。 艶めかしく揺れるその腰を両手で引き寄せて、濡れるその唇と口内を蹂躙して、その顔がとろとろになるまでぐちゃぐちゃにしてやりたい、と、ジョーカーは己の理性と葛藤する。

ここがパレスじゃなかったら、今が強敵との戦闘中じゃなかったらと何度思ったことか。 これが最適解だと己に言い聞かせ、ジョーカーはペルソナを召喚し、コードネームを一旦眠らせる事に成功した。

くたりと力なく崩れ落ちるコードネームを抱き抱えると、戦況を確認すべく仲間たちの元へ急いだ。




ーーーーーーーーー



「ん……、ん!? 敵はッ」
「ごめん。 睡眠の状態異常が効き過ぎたみたいで」
「あ、あれ? ………蓮?」
「俺だよ」
「シャドウは…?」
「やつけた」

がばりとベットから上半身を持ち上げた夢乃は、目を優しく細めて己を見つめる蓮に気付いて目を丸くした。 数回瞬きをして、数秒辺りを見回す。 そしてそこが自分の部屋だと理解した夢乃は、もう一度布団へ背を埋めた。

「………夢? そういう状態異常…?」
「怪盗ウエハースチョコ、食べる?」
「うん」

彼女の記憶は、パレスの強敵と戦っていた辺りで途切れているのだろう。未だ困惑の解けない夢乃に可愛らしいパッケージのお菓子を渡して、蓮はベッドの端に腰を下ろす。

「夢乃、状態異常にかかってどうしようも無かったから…俺のペルソナで眠らせたんだ」
「ごめん。蓮にもみんなにも迷惑かけた…うう、情けない…」
「大丈夫。迷惑というか、夢乃の力の有難みを再確認したというか。…とにかく、皆心配はしてたけど迷惑には思ってないよ」
「ありがとう」

ごくんとウエハースを飲み込んで、クシャクシャの包装を差し出された手に置くと夢乃は眉を下げて微笑んだ。

「ちなみに私、なんの状態異常にかかってたの?」
「…色欲」
「し、色欲」
「うん。色欲」

ふふ、と細められた蓮の瞳には、少しの苦労を感じられて思わず夢乃は肩を小さくする。

「…もしかして…まずいことしてた?」
「まあ…それなりに。相手が俺だったから良かったけどね」
「ぐ…っ ほ、本当にごめん! へ、変な事だよね?色欲でしょ?ごめんごめんごめん…本当にごめん蓮…」
「夢乃、慌てすぎ」

ポンポンと頭を撫でられて、「お恥ずかしいトコロを〜…」なんて小さな声が俯いた口から漏れた。 顔を伏せたまま彼の顔を見れずにいると、夢乃の耳元に暖かい吐息が触れる。

「俺が何されたか、知りたい?」

ああ、意地悪な声色だな。と夢乃は目を閉じた。 色欲状態の自分はかなりの意地悪を彼にしてしまったのであろう、と記憶にない自分を責める。

「知りたいでしょ?今後のためにも知っておいた方がいいよ 」
「………拒否権は?」
「無いかなあ」
「うう…」

両頬を優しく包み込んで、蓮は目を瞑る夢乃の顔を持ち上げた。


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