「わ…」
思わず声を漏らす夢乃を、決して頭は動かさないように視界端に捉える。
テーブルを挟んで前方に設置された最新型のテレビ画面には、男女の艶かしいまぐわいの様子が映し出されていた。…とは言ってもアダルトビデオでは無いので、あくまで音声と『あ、そういうことしてるんだろうな』と思わせるような描写ではあるのだが。
「…」
「…」
じっと悩ましい表情で画面を見つめる彼女を、最早テレビ画面など気にもせずに横から見つめる。
「夢乃」
耳元へ顔を寄せて名前を呼ぶと、夢乃は跳ねるように身体を揺らしてこちらを向く。そのせいで俺達の顔の距離は ほんの数cmで唇を重ねられそうな程に縮まった。
「わっ……な、何、蓮」
案の定恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めて目線だけを外す彼女に、トクトクと心拍数が上がる。
「照れてる夢乃、可愛い」
「…照れてないし」
「耳まで真っ赤だけど」
「い、言わなくていいから…!」
するりとソファに置かれた手に指を絡めると、それに呼応して細い指にぎゅうと握り返された。 そのあまりの愛らしさに、堪らず抱き寄せて夢乃の首元の香りを胸に吸い込む。 ああ、こんな事したら余計に歯止めが聞かなくなるというのに、吸わずにはいられない。
「っちょっと、蓮…」
「一旦止めよう」
戸惑う夢乃の横からリモコンを奪って一時停止ボタンを押すと、丁度画面いっぱいに乱れたシーツが映った所で動かなくなった。
「なんでとめるの…」
まだ頬を染めながら、少し不満げにボヤく夢乃の頬にキスをする。
「だって夢乃が可愛くて」
「…答えになってないけど」
「分かってるくせに…可愛い」
「ちょっと、蓮」
首筋を食むように甘噛みすると、夢乃は胸を柔く押し返しながら弱々しく苦言を漏らした。
「好き、夢乃」
「………うん」
「だいすき」
「…う、うん」
「愛してる」
「…う、……」
愛の言葉に弱いことは重々承知の上で耳元にぽつぽつと呟く。 次第に夢乃の声は小さくなっていき、遂にはただ無言で火照った瞳を此方に向けた。 上目遣いがただただ愛おしい。
「………君、わざとやってない?」
「どうかな…」
恥ずかしそうに頬を染める夢乃が可愛くて、柔らかくて小さな顔を両手で包み込んで深い口付けをした。