10「あ、あのね…」


楽しめるプレゼント。
好きが伝わるプレゼント。
あともうちょっと誰かの話を聞きたいです。
誰かいないかキョロキョロしていると、

「おや? 随分と小さくなったねぇ、潮江文次郎くん?」
「え?」

後ろから声がしたので、振り返りました。
そこには見慣れない色の忍服を着た、包帯まみれの男の人が立っていました。

「だれ?」
「あれ? 耳が…しっぽもあるの?」
「うん。もん、猫だから。しっぽ、さわる?」

知らない男の人は布ごしに口を歪め、笑いました。
そして誇らしげにしっぽを揺らす猫の文次郎を抱き上げ、自分の膝のうえにのせました。

「やわらかいねぇ」
「へへー。いいでしょー。……あ、そうだ」
「なにかな?」
「あ、あのね?」

猫の文次郎は知らない男の人に、人間の文次郎へのプレゼントは何がいいか聞きました。

「ん、文次郎くんにねぇ…。苦無はどう?」
「くない、危ないから触っちゃだめって言われてるの」
「それは残念。んー、でも、やっぱり自分がもらって喜ぶものがいいんじゃないかい?」
「もんが喜んでいいの?」

知らない男の人はうなずいて水筒を取出し、何かを飲みはじめました。

楽しめて、スキが伝わって、自分も喜べるプレゼント。
猫の文次郎は何かを思いつきました。

「もん、あげるの決めた!」
「なにをあげるの?」
「だめっ。ないしょっ」
「ひどいなぁ」



二人の後ろに、

(く、組頭がへんな生き物と話してる…! なにあれ、妖怪?!)

と1人であたふたしている諸泉尊奈門がいました。




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