10「あ、あのね…」


楽しめるプレゼント…。
でもそれだけではどんなプレゼントをあげればいいか、わかりません。
猫の文次郎は、もう少し他の人の意見を聞こうと思いました。

「んみ?」
「おやまぁ、変な猫だ」
「もっ、もん。へんじゃないよ!」

猫の文次郎は落とし穴を掘っている綾部喜八郎先輩に出会いました。

「じゃあ、ふしぎな子猫。なにか僕に用?」
「あ、あのね…」

喜八郎の耳もとに手と口を近付け、コショコショ内緒話をします。



「潮江先輩へのプレゼント。んー、そろばんじゃない?」
「もんにろー、いっぱいもってるよ」
「じゃあおにぎり」
「朝たべてた」
「んー」
「きあちろー」
「きはちろう。何?」
「きあ…きはちろーだったら何がほしいの?」
「僕?」

喜八郎は少し考えて、

「鋤」
「スキ?」
「うん。でも潮江先輩はいらないかな」

スキをあげる。
好きをあげる。
なんだかとってもいいプレゼントな気がします。

「わかった! もんにろーにスキ、あげる!」
「え、潮江先輩にあげるくらいなら僕にちょうだいよ」
「? いいよっ」

ちゅ

猫の文次郎の小さな唇が喜八郎のおでこにくっつきました。

「え?」
「こうやるとスキって伝わるんだよ。じゃあねー!」






「………おやまぁ。…間違えてる」




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