10「あ、あのね…」
「文次郎っ。誕生日おめでとう!」
「先輩、おめでとうございます」
「もーんじろ、おめでとうな」
その頃、人間の文次郎は自分の部屋で誕生日を祝ってもらっていました。
「もう子供じゃないんだ…。べ、別にこんなことしなくても」
「安心しろ、俺からのプレゼントは夜にあげるから」
「い、いらん! この変態アヒルっ」
人間の留三郎をぶん殴って一息ついた、その時。
部屋の障子がガラリと開き、
「もんにろー! 誕生日おめでとうー!!!」
猫の文次郎が言いながら人間の文次郎に飛び付きました。
「お? おまえも祝ってくれるのか。ありがとな」
「もんにろーっ。もんね、プレゼント考えたよ」
「え?」
人間の文次郎は少し驚きましたが、猫の文次郎が言った言葉に、さらに驚きました。
「もん、もんにろーをだっこしてあげる!」
「「「え?」」」
その場にいた全員がそう言いました。
しかし猫の文次郎はやる気まんまんです。
短い腕を懸命に伸ばしています。
「あ、あー…、気持ちだけ貰っとく」
「もんのプレゼント、いやだった…?」
「違う違う…でもなぁ」
人間の文次郎は困ったように人間の留三郎を見ますが、彼はニヤニヤ笑うばかり。
「もん、もんにろーに、楽しくて、スキが伝わって、それからもんもしてほしいことって考えたのに…」
「す、すき!??」
人間の文次郎の顔が赤くなりました。
しかしすぐに落ち着いて、
「あー…えっと、うん。俺にお前を抱かせてくれないか?」
「え?」
「お前を抱いてると温かくて気持ちがいいんだ。それがプレゼントだったら俺は嬉しいぞ」
「ん、わかった!」
そう猫の文次郎が言うと人間の文次郎の胸に顔をうずめました。
その場にいた全員が、猫の文次郎を泣かせないようにした人間の文次郎を心の中で称賛しました。
が、1人だけ泣き顔。
「ずるいぞっ。俺も文次郎に抱かれたい!!!」
その後、襲い掛かるように抱き締めにかかった留三郎を、人間の文次郎が猫の文次郎を死守しながらぶっ飛ばしましたとさ。
オマケ
「組頭、さっきのあれ何ですか?」
「ん? 知らないよ。でも…」
「でも?」
「耳としっぽはえてるから、動物かな?」
「…………………拾ってきちゃダメですからね」
「………………」
「返事をしてください!」
おしまい
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