10「あ、あのね…」
今日はとってもいい日です。
なぜなら今日は人間の文次郎の誕生日だからです。
猫の文次郎は人間の文次郎に誕生日プレゼントをあげようと考えました。
しかしなかなかいいプレゼントが思いつきません。
そんなとき、猫の文次郎の前を尾浜勘右衛門先輩と鉢屋三郎先輩が歩いてきました。
この2人の意見を聞いてみましょう。
「それでさ、兵助ってば豆腐の店しかよらせてくれなくてさ」
「うわー、せっかくの休みが豆腐で終わったのか…」
「でもまぁ、兵助のそんなところも俺は嫌いじゃないけどね」
「ふーん? ……ん? おい、勘右衛門…髪の毛動いてるぞ」
「は? んな、馬鹿な」
ウゴウゴ…。
「う、動いてる!」
「きもっ!」
「きもいって言うな! 俺の髪、どうなってんの!?」
「プハッ!」
うごめいた勘右衛門の髪から、猫の文次郎が出てきました。
どうやら勘右衛門の体をよじ登っていて、最終的に髪に絡まっていたようです。
「え? なんでこいつが?」
「あっ、あのね! もん、聞きたいことがあるの」
「聞きたいこと?」
耳もとで甲高い声をだす猫の文次郎に顔をしかめながら勘右衛門が聞きました。
猫の文次郎は、人間の文次郎へのプレゼントについて話しました。
「へー、潮江先輩、誕生日なんだ」
「私も知らなかった」
「ねえ、なにがいい?」
勘右衛門と三郎は少し悩んで、
「俺だったら、」
「私だったら、」
「「楽しいことをしてほしいな」」
「みゃー?」
「誕生日だもの、楽しみたいよな」
勘右衛門がそう言うと、隣の三郎もうなずきました。
なるほど。人間の文次郎が楽しめるプレゼント。
「わかったっ。ありがと!」
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