お勉強会

夜、咲也くんと談話室で勉強していたら、万里くんに声をかけられた。

「至さんに勉強を教わるはずだったんだけど、急な仕事が入っちゃったみたいで」
「ふーん。咲也、そこ違くね?」
「えっ、どこ?」

教科書を見ればそれでわかるし覚えられるという羨ましすぎる頭脳を持った万里くんは、そのまま咲也くんと私の勉強に付き合ってくれることにしたらしい。でも自分の勉強はしないんだな。万里くんも同じ受験生な気がするんだけどなー。

「ごめんね。オレ、カントクに呼ばれたからちょっと行ってくる」
「おー」
「いってらっしゃい」

咲也くんが席を外した後、万里くんと二人きりになったんだけど――さっきから、真正面の席で肘をついている万里くんの視線をやたらと感じて、やりづらい。
ううん、万里くんはあくまで私の回答をチェックしているのであって、私のことを見ているわけがないんだから。変に意識する必要なんてないし、そもそもこの状態で答えを間違えたら恥ずかしすぎるから、ちゃんと集中して問題を解かなくちゃ……!
とは思うものの、いまいち集中出来ないまま、どうにか頭と手を動かす。

「なぁ」
「ん?なにか間違えてる!?」
「そうじゃなくて。名前って可愛いよなーって思っただけ」
「よかった、違…… ん?」

え?
今、なんて?

……ええっ!?

「お、煽てても何も出ないよ!?」

大慌てで、顔も真っ赤になっているであろう私が今考えられる一番まともな返事に、ふはって万里くんが笑う。

「ざーんねん」

イタズラがバレたみたいな表情で笑った万里くんに、ホッとする。と同時に、ほんのちょっとだけ残念なような、おかしな感情。その気持ちをかき消すように私も笑ったら、元に戻った空気に、どうにか正しく返事ができたような気持ちになって、再び安心した。心臓だけはまだちょっと落ち着かなくてドキドキしてるけど。
万里くん、なんで急にあんなこと言ったんだろう。可愛いって、私より可愛い子なんてきっと学校で、万里くんの周りに沢山いるはずなのに。

……って、そうじゃなくて!
気を取り直して英語の長文読解をやらないと。ええと、When the night comes...

ううんと、People...asked...

....the.........


「はぁ……。可愛いって言ってきた男の目の前で数分後に寝落ちとか、さすがに無防備すぎだろ」


十分後に目を覚ました私は、万里くんからの連絡を受けた咲也くんがいづみさんに借りてきたというブランケットが肩にかかっていて、三人に対して恐縮することになる。
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