「名前は、みちるとはデートするのに、僕とはしてくれないんだな」
「えっ、そんなことないよ!?」
「そうじゃないか。みちるから、この間、放課後に名前のとっておきの場所に連れていってもらったって、自慢されたぞ」
「その日ははるかくんが用事あったって…」
「なら、用事が無い日なら、僕ともデートしてくれるかい?」
「する!するよ!」
「じゃ、明日学校が終わったら直ぐに帰ってくること。僕とドライブデートをしよう」

にっこりと笑ったはるかくんに、「あ、図られた」と思った。そんな、しょげた真似なんてしなくたって、私、喜んで着いていくのになぁ。

そんなわけで、私は今、はるかくん自慢のオープンカーに乗っている。行き先は、知らない。教えてもらえなかった。

「何か音楽をかけたければ、そこにあるのを入れていいよ」
「うん。あ!みちるちゃんのCDが沢山ある!」
「問答無用で置いていかれるんだ」
「私、これ好きなんだー」
「へぇ、意外だな。もっと元気な曲が好きかと思った」
「私だって、しっとりした曲も聴きますっ。でも、今日はもっとアップテンポな曲の方が合うね」

選んだ曲をかけると、はるかくんに「いいチョイスだ」と褒められた。はるかくんに褒められると、くすぐったいけど、自信になるなぁ。

「んーっ、風が気持ちいいね」
「ああ。今日は最高のドライブ日和だな」

「隣には、僕の可愛い名前もいるし」とウインクされる。爽やかな風と、隣に凛々しい顔をしたはるかくん。私、今、すっごい贅沢をしてるなぁ。


「うわあ、たかーい!きれい!」

はるかくんが連れてきてくれたのは、展望台だった。変わらずに気持ちの良い風を全身で感じながら、どこまでも青い海と、都会じゃそう見られない水平線を堪能する。
展望台の下を覗くと崖があって、どうしてか、それに見入ってしまう。

「名前、そんなに身を乗り出したら危ないぞ」
「うん…」
「何かあったのか?」
「ううん、ただ、なんとなく、見たことがある気がして」
「崖を?」
「うーん、分かんない。気のせいかな」

はるかくんに優しく肩を抱かれて、前屈みになっていた体を起こす。すると、そのまま引っ張られた私は、はるかくんに体を預けるような体勢にされた。何か文句を言おうと口を開きはしたものの、ちょっと照れてしまったのと、はるかくんに体を預けているこの状態が、とても落ち着くから、何も言えないまま、口を閉じた。

「…平和だな」
「そうだね」

今、ここは。目に映る分の世界だけは。なんとなく、はるかくんの言葉には、そんな意味が込められているように思った。
少し前から現れて、私たちの生活を脅かしている怪物のニュースは、連日、新聞やテレビを賑わせている。そのことを言ったわけじゃないけれど、はるかくんの言葉は、私にそれを思い出させた。どうして、かな。

はるかくんに肩を抱かれながら、青い海と、さっきよりも少し強くなった風に、問いかける。
はるかくんと

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