はるかくんとみちるちゃんは、ヘリで通学している。お父さんが提供したヘリらしいけど、ヘリって…いや、そもそもなんで二人して操縦出来るの。色々と思うところはあるけれど、ほんの少しの付き合いで、私は、はるかくんとみちるちゃんに関することは、基本的にスルーするスキルを身に付けた。これは私だけじゃなく、「あの二人だから」で全部立派な理由になるらしい。二人に、学校まで乗せて行こうかと何度か誘われたけれど、これ以上注目なんてされたらたまったものじゃないから、断った。学校近いんだから、ヘリに乗る程の距離もないしね。

「名前」

中庭の近くを歩いていたら、みちるちゃんに声を掛けられた。珍しく周りに人もいないので、安心しながら、近付いていく。

「今日、はるかは遅くまで用事があるみたいなの。私は今朝、天王丸に乗って来たから、帰りは徒歩なのよ。だから、一緒に帰らない?」
「帰る!」

思ってもない誘いに、元気よく頷く。

「じゃあ、放課後、ここで待ち合わせましょうか」
「うんっ、楽しみ!」
「ふふ、私もよ」


放課後、私たちは、昼間と同じ場所で落ち合った。みちるちゃんに手を引かれながら抜け道を通っていくと、人目に触れずに学校から出ることが出来た。

「こんな道があるんだね」
「関係者以外立ち入り禁止なのよ。折角の名前との二人の時間を邪魔されたくないもの。ね?」

そう微笑んだみちるちゃんが、繋いでいた手を離して、二人で腕を組む形に変える。

「みちるちゃんは、腕を組むのが好きなの?」
「そうね。この方が、名前とより近くいられるし、多く触れあっていられるもの」
「そういうものかー」
「そういうものよ。ねぇ、今日はどうしましょうか。どこかに寄っていく?それとも、直ぐに帰って、家で少し遅めのティータイムにする?」
「私が選んでいいの?」
「勿論よ。私は、あなたとの時間を過ごせればいいわ」
「みちるちゃんってば、私のことを甘やかしてばっかりじゃだめだよ?」
「それははるかよ。私は、ちゃんと厳しい時は厳しいわ」
「ああ、そうかも」

たわいのない会話。それが、みちるちゃんとだと、とんでもなく特別で、甘くて高級なお菓子を食べているみたいに感じるのは、どうしてだろう。

「それなら、家に向かいはするけど、遠回りをして帰りたいな」
「遠回り?」
「そう。天気も良いし、二人でお散歩しながら帰るの。私が好きな道があるんだけど、そこをみちるちゃんと歩きたいな、って。どうかな?」
「賛成よ。名前の好きな道って、どんなものなのか、楽しみだわ」
「緑が豊かで、すごく落ち着くんだよ。途中で、広場みたいになってるところがあるの。みちるちゃんも、気に入ってくれるといいな」

心からそう願って、言う。「あなたが好きなものを私が嫌うとは思えないわ」なんて言ってくれるみちるちゃんは、やっぱり優しい。仲良く組んだ腕のぬくもりが嬉しくて、みちるちゃんにくっついた。ふしぎ。こうして歩いていると、いつもの道が、きらきら見える。

「名前と一緒だと、ただの道を歩くのも、途端に楽しくなるから、不思議ね。いつもより景色が綺麗に見えるわ」

私も同じこと考えてたよ、と言ったら、みちるちゃんが、今日一番の笑顔を見せてくれた。
みちるちゃんと

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