第八話「再会」


未来とラルゴに乗ったピノコは

街中をただひたすら走った。

そしてラルゴがたどり着いたのは

山の近くにある

『本間医院』と書かれた病院だった。

今は使われていないのか

廃れていたがラルゴが駆け寄った手術室には

『手術中』の赤いランプが点灯していた。

「ちぇんちぇー!」

「黒男さん!」

ブラックジャックがいると確信した二人は

勢いよく手術室に入った。

「ピノコ!未来?!」

驚いたブラックジャックは自分で手術をしていた。

器用に鏡を使って

自分のお腹にメスを入れていた。

ブラックジャックの目は驚いていて

じっとピノコと未来を見た。

「先生、やっぱり生きててくれたんだね!」

「よかった…」

安心した二人だったが

「今すぐ帰れ!」

ブラックジャックは厳しい声でそう言った。

「ちぇんちぇー、どうすればいいの?」

「私達が手伝うから!」

ブラックジャックは一瞬迷ったようだったが

「鉗子を…」

そう言うと

二人は素早く白衣を着て手を洗った。

「ありがとう」

ぽつりと言ったブラックジャックの声は

必死な二人は気が付かなかった。

「止血しました」

「他は?何をするの?」

ブラックジャックの指示通りに

ピノコと未来は素早く手術をしていく。

それはまるで今までの手術と

全く変わらず

三人の日常が戻ったようだった。

「全く…お前らは…」

ブラックジャックが安心して笑った時だった。

「悪運が強いってのはアンタみたいなことを

言うんだろうな」

金髪で鼻が高い男が入ってきて

拳銃をブラックジャックに向けた。

「ダメ!」

未来とピノコは両手を広げて

ブラックジャックを守ろうとした。

手術室に緊張が走る。

そして男は発泡したが

ブラックジャックがメスを投げて

男の右手に命中し、狙いは外れた。

外からはパトカーの音が聞こえる。

「何故…警察が!」

パン!

今度は発砲の音が外から聞こえた。

窓の近くにいた男は外から撃たれて死んだ。

「あ…」

「ピノコ!窓から離れろ!

殺し屋が他にいるんだ!」

ブラックジャックが急いでそう注意をする。

ピノコが撃たれるのを心から怖いと

ブラックジャックは思った。

「見ただろ?

私にかかわるとお前さん達まで

狙われることになるんだ。

さあ、帰るんだ」

「嫌!」

「私達は夫婦でしょ?」

ピノコと未来は涙ぐんだ。

二人の願いはただ一つ

ブラックジャックと一緒にいることだった。

「もう私とは一緒にいられないんだ。

ピノコ、未来…わかってくれ」

「いくら、ちぇんちぇーのお願いでも

それだけは嫌!

ピノコの命は

ちぇんちぇーのために使いたいの!」

「手術だって一人で出来ない時もあるでしょう?

支え合うって約束したじゃない」

「ピノコ…未来…」

二人の説得にブラックジャックの目も潤んだ。

三人の間には深い愛情があった。

「お願い!

ピノコはちぇんちぇーと一緒にいたい!」

「私も!」

「ブラックジャック!どうした?!」

そこに駆けつけたのは友引警部だった。

「ちぇんちぇーを逮捕するならピノコもだよ!

ピノコは無免許ナースなんだから!」

ブラックジャックをまた捕まえると思ったピノコは

友引警部にそうきっぱりと言った。

「はあ?!」

「ピノコちゃんったら」

ピノコに友引警部は不思議そうで、未来は笑った。

そして手術室にいる全員も笑って

ブラックジャックは二人の奥さんとまたいたいと

強く思うのだった。


数時間後。

ブラックジャックと未来とピノコは

空港にいて飛行機に乗った。

「本当に一緒に行くのか?

ピノコも未来も」

ブラックジャックは改めて二人に聞いた。

今ならまだ引き返せるからだ。

「もちろんなのよさ」

「私達はあなたの奥さんなのよ」

二人はそう言って胸を張った。

それを見てブラックジャックも

お前さん達には敵わないと笑った。

三人の長い旅が始まった。


to be continued