第五話「爆発」


ブラックジャックが帰らなくなってから

一か月が過ぎた。

きっと仕事を頑張って終えて帰ってくると

ピノコも未来も信じていた。

ブラックジャックが警察に捕まった時より

二人にとって心配なことではなかった。

今日も喫茶店トムは大賑わいだった。

その理由は

「いらっしゃいませ!」

「あれ?

久しぶりに来てみたら

かわいい子が二人もいるね?」

そう言ってトムに

スーツを着た男性が一人入ってきた。

人懐っこそうな笑顔をピノコと未来に

見せた。

「アルバイトの未来です」

「ピノコなのよさ」

ブラックジャックがいなくて寂しいだろう

と思ったトムのマスターは

お店で二人を店員として迎えてくれた。

マスターの好意に応えようと

久美子と同じ制服を着た二人は

頑張ってウエイトレスをしていた。

「でもダメですよ?

私と未来はちぇんちぇーの奥さんなんだから」

そう言ってピノコはテキパキと仕事をした。

注文を取ったりコーヒーを運んだり

忙しかった。


午後三時ごろの出来事だった。

「未来!ラルゴにご飯あげてくるね」

「うん、いってらっしゃい」

お店の賑わいが落ち着いてきたから

ピノコはそう言って

駐車場にいるラルゴのところまで走った。

手にはドッグフードが入った

赤いラルゴ専用のお皿を持っている。

しかし数分後。

「わんわん!」

ラルゴが異常に吠えて走り出してしまった。

「どうしたのよさ?」

ピノコはラルゴを一生懸命追いかける。

「ラルゴ?!どうしたの?」

店の中からそれを見た未来も

ピノコと同じようにラルゴを追いかけた。

(その道順…もしかして私達の家?)

その未来の予感は当たっていて

ラルゴはブラックジャックの家の前で

再び吠えた。

家の前にはブラックジャックが帰ってきたようで

黒い車があった。

「あ!ちぇんちぇー!」

「帰ってきたのね!」

車を見つけたピノコと未来は

嬉しそうに家に入ろうとしたが

「わんわん!」

ラルゴが間に入って二人を止めた。

二人が中に入るのを止めたいようで

必死にピノコの服に食いついた。

「ラルゴ?」

「そんな必死にどうしたの?」

不思議そうに二人がラルゴに声をかけた。

その時

ドーン!

物凄い爆発が何度も起き

家はあっという間に燃えてしまった。

炎に照らされた二人の顔は絶望していた。

家の中にはブラックジャックがいるはずだ。

「うしょでしょ?」

「そんな…」

燃えた家を呆然と見ることしかできない未来とピノコ。

「ちぇんちぇー!」

「黒男さーん!」

二人の叫びに応える者はいなかった。


to be continued