第一話「心配」


その日ブラックジャックは

手術をした患者の経過を見に行くと言って

一人で出かけた。

しかし夕方になっても帰らない。

未来とピノコはただひたすら

ブラックジャックを待った。

「黒男さん、遅いね」

「そうなのよさ。

何かあったのかな?」

未来もピノコも料理を作りながら

心配になった。

愛する人に何かあったのではないか?

声には出さないが

料理をする二人は同じ不安を抱えていた。

その時、電話の音がした。

「あ!ちぇんちぇーかも!」

嬉しそうにピノコは鍋の火を消して

リビングに向かった。

パタパタとピノコの足音が

部屋の中に響いた。

そして数分後

「アッチョンブリケ!」

電話を切ったピノコがそう叫んだ。

ピノコはいつも驚いた時にする

両手で頬を押さえるポーズをしていた。

受話器は投げ出されていた。

「どうしたの?ピノコちゃん」

「ちぇんちぇーが警察に捕まったのよさ」

「え?!」

未来も驚いて、ピノコの目の前で硬直した。

(黒男さん、何故…)

未来はただ夫が心配だった。

「一体どうして…。

まさか無免許医だから?」

「きっとそうなのよさ」

ピノコはしょんぼりしてしまった。

二人ともそれしか心当たりがなかった。

その夜不安なピノコは

未来と夫婦の寝室で一緒に寝た。

不安そうなピノコは未来になだめられて

眠りについたが

未来は一睡も出来なかった。


翌日、ピノコと未来は

ブラックジャックの面会に行った。

「だからや免許取らないと

ダメだって言ったのよさ!

車の免許はあるのにお医者さんの免許がないなんて

アッチョンブリケなのよさ!」

やはり無免許で医療行為をしたから捕まった

ブラックジャックに

ピノコは透明な壁越しに

そうまくし立てた。

「ピノコちゃん、落ち着いて。

でも黒男さん、元気そうで良かったわ」

「お前さんにも迷惑かけるな。

すまない、未来」

透明な壁越しに

ブラックジャックと未来は見つめあった。

そこには確かに愛があった。

「大丈夫よ」

「これ引き出物」

ピノコはそう言って段ボールを差し出した。

「差し入れの事か、ありがとう」

「ボンカレーとか入っているからね」

未来がそう言うとブラックジャックは微笑んだ。

(やっぱりこの人が好き。

ついていきたい)

改めて未来はそう思った。


to be continued