■第九話「事故」

「おはよう、セイ」

「おはよう、未来。

よく眠っていたな」

私とセイが触れ合えるようになって

二度目の朝が来た。

パン!

心地よいハイタッチの音がしたと思ったら

セイにキスされていた。

「隙あり」

そう言って笑うセイの顔には

昨日のような悩みはないように見えた。

「セイったら…」

私は照れながらも

そんなセイに微笑んだ。


「今日は日曜日だけど、何か予定はあるの?」

セイがコンシェルジュらしい質問をした。

「んー特にないかな」

朝ごはんのパンとコーヒーを口にしてから

私は答えた。

「でもセイとお散歩行きたいかも。

まだこの辺詳しくないでしょ?」

「そうだね、そうしよう」

にっこり笑うセイが愛おしくて

私は自然と笑顔になった。

「ふふ」

そんな私を見てセイも笑う。

「どうしたの?」

「いや、かわいく食べるなと思って…」

「え?」

そんなことを言われたのは初めてで

私の顔はきっと

お皿に乗っているプチトマトのように

真っ赤だった。


「いい天気だね」

セイとお散歩に出かけると

風が心地いいお散歩日よりだった。

「本当だな」

手をつないでいるセイも嬉しそうで

私は安心した。


少し歩いて、私のお気に入りのカフェによって

またセイと歩いた。

このままずっと歩いていたいなんて思う。

「セイ今度は…」

「危ない!」

狭い歩道を二人で歩いていて

セイはいきなり私を抱きしめた。

どん!

鈍い音がして体が宙を舞うのが分かった。

自動車が私に向けてぶつかりそうになり

セイが間に入ったのだと

浮かびながら理解した。

でもセイが抱きしめてくれたから

道路に叩きつけられることはなかった。

「セイ!しっかりして!」

「う…」

私は無傷だったが

セイは苦しそうにその場から起きれなかった。

「未来…無事か?」

「なんで私を…」

私を庇わなければセイは怪我をしなかったのに。

そう思って私は涙をぽろぽろと流した。

衝撃でむき出しになったセイの腕には

いくつものコードが見えた。

ジジジ

ショートを起こしているのか

電気の音がした。

「俺は『お前のセイ』だろ?」

こんな苦しい中

セイはそう言って無理をして笑った。


to be continued