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「……おじゃましまーす」

「どうぞ。ちょっと散らかってるかもだけど」

2人は靴を脱ぎ、中に上がる。

紗良は母子家庭で、母親は夜遅くまで仕事をしており今は家には誰も居ない。

帰ってくるのが遅い母に代わって、いつも紗良が家事・炊事をこなしている。

紗良は今日のお礼にと、カルマに夕食を作ってご馳走することにした。

「っていうか本当にいいの?」

「うん。今日は助けてもらったし、クレープも奢ってもらったし、何かお礼をしたいなーって思ってたの」

「良いのに、そんなの気にしなくて」

「ううん。私がお礼したいだけだから」

そしてカルマはリビングに通された。

「適当にどこでも座ってね。私、ちょっと着替えてくる」

「行ってらっしゃい」

戻ってきた紗良は私服の上にエプロンを付けていた。

「じゃあ今から作るから、ちょっと待っててね。あ、テレビとか見てていいよ」

そう言ってカルマにリモコンを渡す。

「んーいや、いいよ。紗良ちゃんが料理する姿を眺めてるから」

「え、えぇっ!?」

「そのほうが楽しいし」

「……き、緊張するんだけど」

「まあ気にせず作ってよ。……あ、そうだ。紗良ちゃんのエプロン姿、写真におさめとこう」

そう言ってスマホを取り出すカルマ。

「は、恥ずかしいからやめて……!」

そんな風にちょこちょこからかわれつつも、料理が出来上がった。

「おまたせ」

そして紗良は作った料理をテーブルに並べる。

「美味しそうじゃん。いただきます」

「いただきます」

紗良はカルマが料理を口に運ぶ様子を恐る恐る見つめる。

(人に食べてもらうことってあんまり無いから緊張してきた。不味いって言われたらどうしよう……)

不安に思いつつ、

「どうかな……?」

とカルマに感想を聞いてみた。

「……なにこれ。超美味いんだけど」

「ほ、ほんと?」

「うん。予想以上でびっくしした。紗良ちゃん料理上手だね」

カルマにそう褒められ、紗良はホッと胸をなでおろした。

「良かったぁ。口に合わなかったらどうしようかと思ってた」

「ほんと美味しいよ。毎日作ってるだけのことはあるねー。っていうか家事全部紗良ちゃんがやってるわけ?」

「うん。掃除・洗濯・炊事、全部やってるよ」

「大変じゃない?全部一人でこなして」

「平気だよ、もう慣れてるから。お母さん、遅くまで働いてくれてるから、せめてそのぐらいは私がやらないと……」

そう言って紗良は少し切ない笑顔を見せた。

「へぇ。頑張ってんだね、紗良ちゃん」

そうカルマに言われて、紗良は少しだけ涙が出そうになる。

「……ありがとう、赤羽君」

何気ない一言に、なんだか少し救われたような気がした。
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