6
「……おじゃましまーす」
「どうぞ。ちょっと散らかってるかもだけど」
2人は靴を脱ぎ、中に上がる。
紗良は母子家庭で、母親は夜遅くまで仕事をしており今は家には誰も居ない。
帰ってくるのが遅い母に代わって、いつも紗良が家事・炊事をこなしている。
紗良は今日のお礼にと、カルマに夕食を作ってご馳走することにした。
「っていうか本当にいいの?」
「うん。今日は助けてもらったし、クレープも奢ってもらったし、何かお礼をしたいなーって思ってたの」
「良いのに、そんなの気にしなくて」
「ううん。私がお礼したいだけだから」
そしてカルマはリビングに通された。
「適当にどこでも座ってね。私、ちょっと着替えてくる」
「行ってらっしゃい」
戻ってきた紗良は私服の上にエプロンを付けていた。
「じゃあ今から作るから、ちょっと待っててね。あ、テレビとか見てていいよ」
そう言ってカルマにリモコンを渡す。
「んーいや、いいよ。紗良ちゃんが料理する姿を眺めてるから」
「え、えぇっ!?」
「そのほうが楽しいし」
「……き、緊張するんだけど」
「まあ気にせず作ってよ。……あ、そうだ。紗良ちゃんのエプロン姿、写真におさめとこう」
そう言ってスマホを取り出すカルマ。
「は、恥ずかしいからやめて……!」
そんな風にちょこちょこからかわれつつも、料理が出来上がった。
「おまたせ」
そして紗良は作った料理をテーブルに並べる。
「美味しそうじゃん。いただきます」
「いただきます」
紗良はカルマが料理を口に運ぶ様子を恐る恐る見つめる。
(人に食べてもらうことってあんまり無いから緊張してきた。不味いって言われたらどうしよう……)
不安に思いつつ、
「どうかな……?」
とカルマに感想を聞いてみた。
「……なにこれ。超美味いんだけど」
「ほ、ほんと?」
「うん。予想以上でびっくしした。紗良ちゃん料理上手だね」
カルマにそう褒められ、紗良はホッと胸をなでおろした。
「良かったぁ。口に合わなかったらどうしようかと思ってた」
「ほんと美味しいよ。毎日作ってるだけのことはあるねー。っていうか家事全部紗良ちゃんがやってるわけ?」
「うん。掃除・洗濯・炊事、全部やってるよ」
「大変じゃない?全部一人でこなして」
「平気だよ、もう慣れてるから。お母さん、遅くまで働いてくれてるから、せめてそのぐらいは私がやらないと……」
そう言って紗良は少し切ない笑顔を見せた。
「へぇ。頑張ってんだね、紗良ちゃん」
そうカルマに言われて、紗良は少しだけ涙が出そうになる。
「……ありがとう、赤羽君」
何気ない一言に、なんだか少し救われたような気がした。
prev next
back